このページの要点
- 規約は、総則、会員資格、予約・料金、休会・退会、休業、禁止事項、免責、個人情報、解除、変更、管轄の順に並べ、同じ内容を複数の条に書かない。
- 規約を契約の内容にするには、定型約款の合意の要件を満たす(民法548条の2第1項)。申込書・料金表・キャンセルポリシーとの優先関係を決め、金額や期限を「別途定める」に預けない。
- 会員資格の譲渡・相続、禁止事項、利用停止・除名は、事由、段階、手続、除名後の精算を書く(民法541条・542条、消費者契約法10条)。
- 規約の変更は、民法548条の4の要件(一般の利益に適合、又は合理的で変更の定めがある)と周知が前提。合意管轄は書面か電磁的記録で、第一審に限る(民事訴訟法11条)。
結論:規約は「骨格の条」と「各論の条」に分け、条の順序を先に決める
スタジオやジムの利用規約は、開業の直前に急いで作られ、別の規約のつぎはぎになりやすい書類です。つぎはぎの規約には、よく似た特徴があります。同じ内容、たとえば免責やキャンセルが複数の条にばらまかれ、強さの違う書き方が同居していること。そして、「別途定める」で終わる条が多く、規約を読んでも金額も期限も分からないことです。
これを防ぐのは、書き始める前に、条の一覧と順序を決めておくことです。次の表は一つの例です。各論の条は、それぞれ個別のページで考え方を詳しく解説しているので、ここでは規約全体の骨格と、個別のページで扱っていない条を中心に説明します。
| 条の区分 | 置く内容 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 総則・定義 | 規約の適用範囲、用語の定義、他の書面との優先関係。 | 本ページ(優先関係) |
| 会員資格・契約の成立 | 入会の申込みと承諾、資格の要件、未成年、体験との関係。 | 体験・入会の勧誘、本ページ |
| 予約・キャンセル・休会・退会 | 予約の方法、キャンセルの期限と消化、休会と退会の手続。 | 予約キャンセル・休会・退会 |
| 料金・返金・有効期限 | 料金表の位置づけ、支払い、返金の算式、有効期限。 | 回数券・月謝・入会金の返金 |
| 休業・営業時間の変更 | 休業と営業時間の変更の通知、代替の措置。 | 本ページ |
| 禁止事項・利用停止・除名 | 禁止行為、措置の段階、除名後の精算。 | 本ページ |
| 健康状態の申告・免責・賠償 | 申告の義務、責任の範囲、賠償の範囲。 | 同意書と免責条項 |
| 個人情報・撮影 | 利用目的、第三者への提供、撮影と録音の扱い。 | カルテ・健康情報 |
| 解除・契約の終了 | 契約の終了の事由と、終了後に残る条。 | 本ページ(除名) |
| 規約の変更 | 変更の要件、周知、同意しない会員の扱い。 | 本ページ |
| 準拠法・合意管轄 | 準拠法、管轄裁判所。 | 本ページ |
表の順序は、会員が入会してから退会するまでに経験する順にしています。
順序は、「入会する、使う、やめる、守る、問題が起きる、規約そのものを扱う」の流れにします。この順序にしておくと、料金を改定するときは「料金・返金」の条、休業が増えたときは「休業」の条というように、変更のたびに差し替える条が決まります。条を増やすほど規約が強くなるわけではなく、同じ内容が二か所に書かれるほど、片方だけを直し忘れて食い違うおそれが増えます。
免責は一か所にまとめます。規約の前の方で「当店内の事故は一切責任を負わない」と言い切り、後ろの免責条項では「故意又は重大な過失による場合を除く」と書くと、強さの違う二つの定めが同居します。会員から見れば、どちらが適用されるのか分かりません。責任の全部を免除する条項は、消費者契約法8条で無効になります(免責条項の書き方)。
契約の成立と、規約・申込書・料金表・ガイドラインの優先関係
規約の冒頭に、「利用者は、規約に予め同意したものとみなされる」「別途定める個別規定を含めて契約が成立する」と書く例が多く見られます。この書き方には二つの問題があります。
一つめは、「みなす」と書いても、同意があった事実が残るわけではないことです。規約を契約の内容にするには、民法の定型約款の要件を満たす必要があります。定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)を行うことの合意をした者は、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、又は定型約款を準備した者があらかじめその旨を相手方に表示していたときは、個別の条項についても合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。だから、入会や予約の画面、申込書の上で、「規約を契約の内容とする」旨を示すことが、実際の備えになります。なお、プランごとに個別に条件を決めるパーソナルの契約では、規約が定型約款にあたるかどうかが前提の問題になり、実際には申込書に書いた個別の条件が中心になります。
二つめは、相手方の権利を制限し又は義務を加重する条項で、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなされることです(同条2項)。規約に入れたからといって、すべての条項が契約の内容になるとは限りません。
規約の内容は、会員がいつでも見られる状態にします。定型約款を準備した者は、合意の前、又は合意の後相当の期間内に相手方から請求があったときは、遅滞なく、相当な方法で内容を示さなければならず(民法548条の3第1項)、合意の前に請求を拒んだときは、一時的な通信障害などの正当な事由がある場合を除き、548条の2の規定は適用されません(同条2項)。サイトへの掲載、紙の交付、予約画面からのリンクのいずれかで、規約を常時示せるようにしておきます。
もう一つの論点が、書面どうしの優先関係です。スタジオには、規約本体のほかに、申込書、料金表、キャンセルポリシー、ガイドライン、健康状態の同意書があります。これらが矛盾したときにどれが優先するかを決めておかないと、会員が自分に有利な書面を持ち出します。また、規約が「詳細は別途定めるガイドライン等に従う」とだけ書いて、料金やキャンセルの条件を預けてしまうと、規約を読んでも肝心なことが分かりません。
条文例
書面の優先関係(条文例)
1本契約は、本規約、申込書、料金表、キャンセルポリシー及び別紙(以下「本規約等」という。)によって構成する。
2本規約等の内容が矛盾するときは、申込書に会員と当店が個別に合意して記載した内容、本規約、料金表、キャンセルポリシーの順に優先する。
3当店は、予約の受付時間、持ち物その他の運営上の細目を、運営上のご案内として別に定めることができる。ただし、料金、回数、有効期限、キャンセル及び返金の条件は、本規約等に定めるところによる。
運営上の細目だけを「別に定める」に委ね、会員の負担や権利に関わる条件は規約本体に残す形です。個別に値引きや特典を約束した場合は、申込書に書いておくことで、規約との優先関係が説明できます。
書き方の例(一般的な例) 「別途定める」への預け方と、同意の書き方
キャンセルの条件
理由期限と消化の有無は、会員が申込みの時点で知らなければ判断できない条件です。
同意
理由同意の操作と記録が、規約を契約の内容にしたことの説明になります。
会員資格:譲渡・貸与・代理利用、相続、未成年、登録の拒否
会員の利用権は、本人固有のものとして、第三者への譲渡、貸与、共有、代理利用を禁止するのが一般的です。この禁止は、法的には二つに分けて考えます。
一つは、回数券で得た「レッスンを受ける権利」を他人に譲るという意味の、権利の譲渡です。債権は原則として譲り渡すことができ、当事者が譲渡を禁止し又は制限する意思表示をしていても、債権の譲渡は効力を妨げられません(民法466条2項)。ただし、その意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人に対しては、債務者はその履行を拒めます(同条3項)。なお、特定の人の指導を受ける権利は、性質上譲渡を許さないと評価される余地もあります(同条1項ただし書)。つまり、スタジオが譲受人への提供を拒めるのは、規約に譲渡の制限が書かれていて、それが譲受人に知られている(又は重過失で知られていない)場合に限られます。譲渡の禁止を規約にはっきり書き、会員から見える形で示しておく理由です。
もう一つは、名義の貸与や代理出席です。本人以外が受講すると、本人確認、健康状態の申告、保険の対象、定員の管理が成り立ちません。利用時の本人確認の方法と、違反が確認されたときの措置(予約の取消、利用の制限)を書きます。
相続についても、規約で扱いを決めておくとよい点です。相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しますが、被相続人の一身に専属したものは承継しません(民法896条)。特定の人の身体に対する指導を受ける地位は、一身専属的なものとして、「会員資格は相続されない」と書く規約が多く見られます。ただ、会員資格が相続されないと書くだけでは、前払いした料金の未使用分をどうするかが決まりません。亡くなったときの未使用分の精算(返金の有無と計算)を、返金の条とあわせて書いておくと、遺族への対応が一貫します(未使用分の返金の算式)。
未成年の会員については、法定代理人の同意を得ない法律行為は取り消すことができます(民法5条1項、2項)。申込みの要件に、保護者の同意と署名を置き、保護者が会員の責任をどこまで負うかも書きます(未成年の受け入れ)。
会員登録を拒否し、又は取り消せる事由は、虚偽の申告、過去に除名された者、反社会的勢力などと、事由を具体的に並べます。末尾に「その他不適当と判断する場合」と置く場合も、基準を「合理的に判断する場合」にしておくと、後に説明がつきます。健康上の理由で利用を断る書き方は、病気や障害のある人を一律に断る言い回しにせず、安全に提供できるかどうか(医師の許可、プログラムの調整)を基準にします。
禁止事項と利用停止・除名:事由、段階、手続、除名後の精算
禁止事項には、他の会員やスタッフへの迷惑行為、勧誘や営業、撮影と録音、施設の損壊、無断の譲渡や代理利用、虚偽の申告、反社会的勢力との関係が並びます。包括的な条項として「その他当店が不適切と判断する行為」を置く例が多いのですが、判断の基準が当店の裁量だけになるので、「合理的に」判断する行為、と書いておきます。
問題は、違反があったときの措置の書き方です。規約に、事前の通知や催告なく利用停止や除名ができると書く例が見られます。民法の原則では、相手が債務を履行しないときは、相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がなければ解除でき(541条)、催告なしに解除できるのは、542条に定める場合に限られます。規約で無催告の解除事由を置くこと自体はできますが、軽微な違反までを即時の除名の事由に並べると、消費者契約法10条の審査を受けるおそれがあります。
違反があったときの措置の段階(例)
暴力、脅迫、ハラスメント、他の会員の安全を害する行為、反社会的勢力との関係がありますか。
はい直ちに利用を停止し、除名を含む措置を取る。理由を会員に通知する。
いいえ → 次へ
禁止事項への違反が、注意をしても繰り返されていますか。
はい書面又はメッセージで是正を求めたうえで、予約の制限、一定期間の利用停止、除名の順に措置を取る。
いいえ → 次へ
初めての軽い違反ですか。
はい口頭又はメッセージで注意をし、記録を残す。
いいえ → 次へ
措置の内容と理由は、会員に通知します。通知には、問合せの窓口を書いておきます。
措置の前後の手続も、あらかじめ決めておきます。違反の事実を、記録と複数のスタッフの確認で確かめること、措置の内容と理由を会員に通知すること、会員が事実を争うときの窓口です。弁明の機会の付与は規約で必須とは限りませんが、理由を書いた通知と窓口があるだけで、争いが大きくなるのを防げます。
除名後の精算も、規約の中で書いておきます。会員の側の事由による除名だから前払いの料金は一切返さない、と書く例がありますが、無条件に返さないとすると、解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金と評価される場合には、消費者契約法9条1項1号の「平均的な損害」を超える部分が無効とされるおそれがあり、同法10条の審査も受け得ます。未使用分から所定の手数料を差し引いて返す計算を基本にし(返金の算式)、重大な違反の場合に限り、返金額から実際に生じた損害を差し引ける、と別に書く設計が考えられます。
賠償の条の書き方にも注意が要ります。会員の違反によるスタジオの損害を請求できるとして、損害の中に、営業損失、人件費、逸失利益、信用毀損による間接的な損害、争訟に要した費用までを一括して並べる例があります。民法の原則は、通常生ずべき損害の賠償です(民法416条1項)。会員にこれより広い賠償を課す条項は、消費者契約法10条の審査を受け得るため、「通常かつ直接の損害」に限る書き方が安全です。
条文例
利用停止・除名(条文例)
1会員が次の各号のいずれかに該当するときは、当店は、会員に通知したうえで、予約の取消、一定期間の利用の停止、又は会員資格の取消(以下「除名」という。)の措置を取ることができる。(1) 他の会員又はスタッフに対する暴力、脅迫、ハラスメントその他の迷惑行為 (2) 当店の設備の故意又は重大な過失による損壊 (3) 本規約の禁止事項への違反で、当店が是正を求めても改まらないもの (4) 反社会的勢力との関係が判明したとき
2前項第1号又は第4号に該当するときは、当店は、事前の通知なく利用を停止することができる。この場合、当店は、速やかに理由を会員に通知する。
3除名の場合、当店は、未使用の前払い料金から、別に定める手数料を差し引いた額を返金する。ただし、第1項第1号又は第4号に該当する場合は、当店に生じた損害のうち、通常かつ直接のものを差し引くことができる。
措置の段階、通知、除名後の精算を一つの条にまとめた例です。
書き方の例(一般的な例) 除名の事由の書き方
事由
理由軽い違反と重い違反を同じ重さで扱わないことで、措置の必要性を説明できます。
精算
理由無条件の「返金なし」は消費者契約法の審査を受けやすく、算式で書けば説明もできます。
施設の一時休業・営業時間の変更:規約のどの条に、どう置くか
休業の理由ごとの会費の考え方は、予約キャンセル・休会・退会と返金のルールで整理しています。この節では、それを規約のどの条に、どう置くかを考えます。規約の中には、「休業」「臨時休業」「営業時間の変更」「レッスンの中止」が混ざって書かれることがあり、それぞれ会員への影響が違います。定義の条で言葉を分けておくと、後の条が書きやすくなります。
| 理由 | 民法上の位置 | 規約で決めること |
|---|---|---|
| 災害、感染症、行政の要請など、店の責めに帰さない事由 | 双方に責任のない事由で提供できないとき、会員は料金の支払を拒める(民法536条1項)。 | 提供できなかった分を、振替、期間の延長、返金のどれにするか。会員が選べるか。 |
| 設備の点検、改装、移転など、店の事情 | 店の側の事情で提供できないときは、債務不履行(同法415条)や解除(同法542条)の問題になる。 | 事前の告知の期限、期間の延長、返金の算式。 |
| インストラクターの急病・退任 | 同じく、店の側の事情で提供できない場合。 | 代替の講師、別の時間への振替、希望しないときの返金。 |
| 営業時間や定休日の恒常的な変更 | 契約内容の変更にあたる。 | 変更の通知と、同意しない会員の退会の扱い(次の節)。 |
規約が、当店の都合による中止の場合は振替又は返金の措置を講じるとだけ書いていることがあります。これでは、会員が選べるのか、店が決めるのか、いつまでに申し出るのか、返金の方法と時期はどうなるのかが分かりません。選ぶ権利を会員に与えるのか店が決めるのかを書き、申出の期限、返金の方法と時期、手数料の有無を、一つの条にまとめます。返金の算式は、返金のルールと同じものを使います。
月額制の会費では、休業の日数に応じて計算期間を延長する方法があります。この場合は、何日以上の休業から調整するかを決め、短い休業は調整しない、と区切る設計もあります。区切りの日数は、休業が会員の利用の機会をどれだけ奪うかを基準に決めます。休業の通知は、掲示、メッセージ、サイトの掲載のうち、どれを使うかを書き、実際に通知した記録を残します。
条文例
休業と代替の措置(条文例)
1当店は、設備の点検、改装、災害その他やむを得ない事由により、休業又は営業時間を変更するときは、会員に事前に通知する。緊急のときは、事後速やかに通知する。
2当店の事情又は当店及び会員のいずれにも責任のない事由により、予約されたレッスンを提供できなかったときは、会員は、当該レッスンについて、別の日時への振替、有効期間の延長、又は未使用分の返金のいずれかを選ぶことができる。
3会員は、前項の選択を、通知を受けた日から所定の期間内に当店に申し出る。申出がないときは、当店が定める措置を取る。返金の額と方法は、別に定める算式による。
会員に選ぶ権利を与え、期限と返金の算式を別に示した例です。
規約の変更:民法548条の4の要件と、「必要に応じて変更できる」の問題
規約は、事業を続けるうちに変わります。会員全員と個別に合意し直すことは現実的でないため、定型約款にあたる規約には、民法に変更の仕組みがあります。定型約款準備者は、次の場合には、変更後の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更できます(民法548条の4第1項)。
- 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき(1号)。
- 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更することがある旨の定めの有無とその内容その他の事情に照らして合理的なものであるとき(2号)。
手続としては、効力発生時期を定め、定型約款を変更する旨、変更後の内容、効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法で周知しなければなりません(同条2項)。2号による変更は、効力発生時期が到来するまでに周知しなければ、効力を生じません(同条3項)。また、第4項は、定型約款の合意の規定にある不当条項の規律(548条の2第2項)が、変更には適用されないと定めています。
ここから、よくある条項の問題が分かります。「当店は、必要に応じて、随時、本規約を変更できる。変更後に利用を継続した場合は、変更に同意したものとみなす」とだけ書く条項です。規約に書いたからといって、要件を満たさない変更が有効になるわけではありません。変更をすることがある旨の定めの有無と内容は、2号の合理性を判断する事情の一つですから、変更の要件と手続を示す定めの方が、変更の根拠として強くなります。また、継続して利用すれば同意したとみなす、という条項は、消費者契約法10条の審査を受けるおそれがあります。
実務の設計としては、変更の種類を分けます。
- 会員に有利又は影響のない変更(レッスンの追加、営業時間の拡大):効力発生日の前に周知する。
- 会員に不利益な変更(料金の改定、キャンセル条件の厳格化):周知の期間を長くとり、個別のメッセージでも通知する。同意しない会員が、違約金なしで退会でき、未使用分を精算できると書く。
- 会員との個別の合意が前提の事項(個別の申込書に書いた条件):548条の4は使えず、個別の合意が必要になる。
周知の期間は具体的な日数を規約に書く必要はなく、「相当の期間」としたうえで、サイトの掲載とメッセージの通知を併用し、変更の版と日付を履歴として残します。
条文例
規約の変更(条文例)
1当店は、次の各号のいずれかに該当する場合には、民法548条の4に基づき、本規約を変更することがある。(1) 変更が会員の一般の利益に適合するとき (2) 変更が契約の目的に反せず、変更の必要性、変更後の内容の相当性その他の事情に照らして合理的であるとき
2当店は、前項の変更をするときは、変更の効力発生日の前に、変更する旨、変更後の内容及び効力発生日を、サイトへの掲載及びメッセージの送信により周知する。
3会員に不利益な変更について、会員が同意しないときは、効力発生日までに退会を申し出ることができる。この場合、当店は、違約金その他の負担を求めず、未使用分を所定の算式により精算する。
要件、周知、同意しない会員の退会を、一つの条にまとめた例です。
準拠法・合意管轄と、同意の取り方
準拠法は、会員が国内に住む場合は日本法と書けば足ります。管轄裁判所の定めは、民事訴訟法11条が根拠で、第一審に限り、合意で管轄裁判所を定められます(同条1項)。この合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、書面でしなければ効力を生じません(同条2項)。電磁的記録によってされた合意は、書面によってされたものとみなされます(同条3項)。つまり、予約画面で規約への同意を取り、その記録が残っていれば、合意の形式は満たしやすくなります。
書き方では、「専属的」か「付加的」かを区別します。「〜裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」と書けば、他の裁判所での提訴は排除されます。「〜裁判所も管轄裁判所とする」にとどめれば、法律上の管轄に加えて、合意した裁判所でも提訴できる形になります。会員の住所から遠い裁判所を専属にすると、会員の負担が大きく、消費者契約法10条の審査の対象になり得ます。また、民事訴訟法17条は、訴訟の著しい遅滞を避け又は当事者間の衡平を図るために必要があるときの移送を定めており、合意があれば常にその裁判所で審理されるとも限りません。店舗の所在地を管轄する裁判所を付加的な管轄に置くか、会員の住所地の裁判所を排除しない形にしておく方が、規約全体の信頼性も保てます。
同意の取り方は、規約の効力を後から説明するために、実務の中で最も差が出る部分です。予約システムや入会フォームでは、次のように設計します。
- 申込みのボタンの直前に、規約、料金表、キャンセルポリシーへのリンクを表示する。
- 同意のチェックを必須にし、チェックを入れないと先に進めないようにする。
- 同意した日時、規約の版、利用者を識別できる情報を記録する。
- 規約を変更したときは、版を更新して記録し、重要な変更では再度の同意を取る。
紙の申込書では、規約を渡したこと(又は渡したことを申込書に記載すること)、署名、控えの交付、未成年の場合の保護者の署名が基本です。体験の利用の際も、体験用の同意を取ります。同意の取り方を決めておくことが、契約の成立の時点(体験・入会の勧誘)を一つに定めることにもつながります。
規約を点検する順序と、起きがちなこと
既にある規約を点検するときは、条を頭から読むより、次の問いを順に当てる方が、食い違いを見つけやすくなります。
ヒヤリングの問いと理由 利用規約を点検するときの問い
- 規約のほかに、申込書、料金表、ガイドライン、同意書はありますか。矛盾したとき、どれが優先しますか。優先関係の条がなければ、個別の書面に預けた条件の整理から始めます。
- 「別途定める」とした事項に、金額、期限、返金、キャンセルの条件が含まれていませんか。含まれていれば、規約本体か一体の別紙に移します。
- 申込みの画面や用紙のどこで、規約を契約の内容にする旨と掲載場所を示していますか。同意の日時と規約の版を記録していますか。定型約款の合意の要件と、後日の説明に使う記録の問いです。
- 会員資格の譲渡、代理利用、相続について、どう書いていますか。相続のときの未使用分は。譲渡の禁止の示し方と、未使用分の精算を確認します。
- 除名の事由と措置の段階は分かれていますか。除名後の前払い分はどうなりますか。事由が一括りなら、重い違反と軽い違反に分けます。
- 休業や講師の退任のとき、振替、延長、返金のどれを、誰が選びますか。選ぶ権利と申出の期限を確認します。
- 規約の変更の条は、民法548条の4の要件と周知の方法を書いていますか。「必要に応じて変更できる」だけなら、要件と手続を足します。
- 管轄裁判所は、会員の住所から遠くありませんか。専属ですか、付加的ですか。専属で遠方なら、付加的か、住所地を排除しない形に見直します。
よくあるご質問
利用規約には、どの条をどの順に置けばよいですか?
入会から退会までの流れに沿って、総則、会員資格と契約の成立、予約・キャンセル・休会・退会、料金・返金、休業、禁止事項と除名、免責と賠償、個人情報、解除、規約の変更、準拠法と管轄の順に置くのが整理しやすい並びです。同じ内容を複数の条に書かず、免責は一か所にまとめます。
規約に「詳細は別途定めるガイドラインに従う」と書けば、キャンセルや返金の条件は規約に書かなくてもよいですか?
書かないままにするのはお勧めできません。料金、回数、有効期限、キャンセル、返金の条件は、会員が申込みの時点で知る必要がある条件です。規約本体か一体の別紙に書き、予約の受付時間や持ち物といった運営上の細目だけを別の案内に委ねます。
会員が亡くなったとき、会員資格と未使用の回数券はどうなりますか?
相続人は、被相続人の一身に専属したものを除いて権利義務を承継します(民法896条)。特定の人への指導を受ける地位は一身専属的とする規約が多いのですが、前払いの未使用分の扱いは別に決める必要があります。返金の有無と計算方法を、返金の条とあわせて規約に書いておくと対応が一貫します。
規約に「必要に応じて変更できる」と書けば、いつでも変更できますか?
できるとは限りません。定型約款にあたる規約の変更は、会員の一般の利益に適合する場合、又は契約の目的に反せず必要性と相当性などに照らして合理的な場合に限られ、効力発生時期を定めて変更の内容を周知する必要があります(民法548条の4)。要件と周知の方法を規約に書き、不利益な変更では同意しない会員の退会を認める設計にします。
合意管轄は、店の所在地の裁判所だけにしてよいですか?
合意管轄は書面又は電磁的記録で、第一審に限って定められます(民事訴訟法11条)。ただ、会員の住所から遠い裁判所を専属にすると、会員の負担が大きく、消費者契約法10条の審査の対象になり得ます。店舗の所在地の裁判所も管轄に加える付加的な書き方にとどめる方が、安定します。
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本ページは一般的な情報提供です。法令の解釈や行政の運用は、個別の事情や今後の改正・通知によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 国民生活センター / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 個人情報保護委員会