パーソナルジムの分割払い・ローンと割賦販売法:自社分割・カード分割・提携ローンの契約書

ジムの分割払いは、分割金を誰が受け取り誰が立て替えるかで、割賦販売法のどの規定がかかるかが決まります。自社分割の条項の直し方、カード分割と提携ローンでジムに残る役目、閉店や退会のときの扱いまでをまとめます。

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このページの要点

  • 分割は、自社分割(2条1項)、カード分割(2条3項)、提携ローン(2条4項)に分けて考え、一つの規約に混ぜない。
  • 自社分割は2か月以上・3回以上で、指定役務に「技芸又は知識の教授」の包括的な項目がある。クーリングオフがないことと分割が自由なことは別の話である。
  • 割賦販売に当たる場合は、解除や一括請求の前に20日以上の期間を定めた書面での催告が必要で、遅延損害金は法定利率、解除時の請求には上限がある。
  • カード分割や提携ローンでも、抗弁の接続や撤回等の連動があり、閉店・退職・審査不成立のときの手順を契約書と運用で決めておく。

結論:ジムの「分割払い」は、分割金を誰が受け取り、誰が立て替えるかで三つに分かれます

パーソナルジムの入会金やコース料金を「分割で払いたい」と言われたとき、最初に確かめるのは分割の回数ではなく、分割金を誰が受け取るのかです。ジム自身が毎月または数回に分けて受け取るなら、法律上は割賦販売(代金や対価を分けて受け取る販売の方法)の問題になります。カード会社が代金を立て替えてジムには一括で入金されるなら、ジムの側の義務は軽く、ただし会員がカード会社に対して主張できることがあります。信販会社がジムの案内で立て替える提携ローンなら、ジムにも表示と書面の役目が生じます。この三つを混ぜたまま一つの規約に「分割払い可」と書くことが、実務で最も多い失敗のもとです。

根拠になる法律は割賦販売法です。同法2条は、ジムの現場で「分割」と呼ばれるものを、自社で受け取る割賦販売(2条1項)、カードを使った包括信用購入あっせん(2条3項)、カードを使わず特定の店の役務だけを対象とする個別信用購入あっせん(2条4項)に分けて定義しています。パーソナルトレーニングは特定商取引法の特定継続的役務の指定7役務に入りませんが(クーリングオフがあるかの当てはめで扱っています)、割賦販売法の指定役務は別のリストを使います。「クーリングオフがないから分割払いも自由」とは言えない、というのが、このページの出発点です。

ジムの分割払い、三つの仕組みと主にかかる規定

自社分割(ジムが分割金を直接受け取る)

割賦販売法2条1項1号

対価を2か月以上の期間にわたり3回以上に分けて受け取り、かつ役務が政令の指定役務に当たると、表示・書面・書面催告・解除時の上限の規定がジムに直接かかる。

カード分割・リボ払い(カード会社が立て替える)

包括信用購入あっせん(同法2条3項)

義務の中心はカード会社。代金を2か月を超えない範囲で受け取る翌月一括払いなどは、この定義から外れる。会員がジムへの主張をカード会社に向けられる場合がある。

提携ローン(信販会社が店の案内で立て替える)

個別信用購入あっせん(同法2条4項)

役務の種類は指定されたものに限られない。ジムにも取引条件の表示と書面の交付の役目があり、信販会社の審査にも関わる。

名称ではなく、誰が誰にいつ何を支払うかで整理します。

月謝制と、総額を分けて払う分割は、何が違うのでしょうか

ジムの支払いの設計は、一見すると「月々いくら」という同じ形に見えても、契約書の組み立てが三種類に分かれます。第一は、期間の定めがなく、毎月その月の会員資格やレッスンの対価を受け取る月額会費です。第二は、「6か月コース、総額30万円」のように総額が決まっていて、それを毎月に分ける設計です。第三は、回数券やコース料金を契約時に一括で受け取る設計です。割賦販売の定義(2条1項1号)は、対価を「分割して受領する」ことを要件にしているため、問題になりやすいのは第二の設計です。

実務で見落とされやすいのは、月額で表示しているだけで、中身は第二の設計になっている契約です。たとえば「月々9,800円×12回」と広告し、契約書にコース期間12か月・総額の定めがあれば、総額を12回に分けて受け取っていると見られます。反対に、期間の定めがなく、毎月の利用に対して毎月の会費を受け取り、いつでも退会できる会員制であれば、総額を分割しているとは言いにくく、少なくとも第二の設計とは別に検討することになります。どちらに当たるかは契約書の文言と運用で決まるため、広告の見せ方と契約書の中身が食い違っていないかを確かめます。

ジムの支払い設計の類型と、最初に見る点
支払い設計支払いの中身割賦販売法で最初に見る点契約書で押さえること
期間の定めのない月額会費毎月、その月の利用の対価を課金する総額を分けているのではない形。ただし最低利用期間や中途解約時の残額請求を付けると総額分割に近づく最低利用期間の有無、退会の時期、決済失敗時の扱い。
期間の定めのある月額コース(総額が決まっている)6か月・12か月などのコース総額を毎月に分ける自社分割に当たり得る。回数と期間の要件、指定役務の該当性を確認する現金提供価格、分割後の総額、各回の額、催告、解約時の精算。
提携ローン信販会社がジムに代金を支払い、会員が信販会社に分割で支払う個別信用購入あっせん。ジムにも表示・書面の役目審査に通らなかったときの契約の扱い、撤回・解除の連動、役務の開始時期。

表は設計の整理です。実際に当たるかどうかは、契約書の定め、支払いの回数と時期、決済の仕組みを見て個別に判断します。

自社分割が割賦販売になる条件:2か月以上・3回以上・指定役務

ジムが自分で分割金を受け取る自社分割が割賦販売(同法2条1項1号)に当たるのは、次の三つが重なるときです。①対価を2か月以上の期間にわたって受け取る、②3回以上に分けて受け取る、③その役務が政令で定める指定役務である、の三つです。「2か月以上の期間にわたり、かつ、3回以上」と書かれているため、2回払いは、期間がどれだけ長くても当たりません。3回払いでも、全部の支払いが2か月に満たない期間で終われば、この定義の外に出ます。ただし、期日を後から延ばして2か月以上にしてしまうと、設計の前提が崩れます。

支払いの回数と期間の当てはめ(役務が指定役務に当たる場合の見方)
支払いパターン回数期間見方
契約時+翌月の2回払い2回1か月3回に満たないため、この定義の外。
契約日から30日以内に3回で払い終える3回2か月に満たない期間の要件を満たさない設計。期日を後ろへずらすと崩れるため、変更の扱いを決めておく。
契約時・1か月後・2か月後の3回3回2か月2か月以上・3回以上に当たり得る。
12回払い(総額が決まっている)12回11か月当たり得る。解除時の上限などの規定が直接かかる。

「2月以上」の数え方は、境界に近い設計にする場合、日数の取り方を決めて運用します。

③の指定役務は、割賦販売法の政令(割賦販売法施行令)の別表が列挙しています。特定商取引法の指定7役務は限定列挙で包括的な項目がありませんが、割賦販売法の指定役務の列挙には、「技芸又は知識の教授」という包括的な項目が含まれています。また、同じ列挙には「保養のための施設又はスポーツ施設を利用させること」も含まれているため(施行令別表第一の三)、施設の利用を内容とする会員制のジムやスタジオは、この項目にも当たり得ます。トレーニングの指導や食事・生活習慣の指導、姿勢改善のレッスンが、この項目に当たると考えるかどうかは、項目の文言と所管官庁の解釈に当てはめて判断する必要があります。ジムにクーリングオフがないという結論を、そのまま割賦販売法にも持ち込んで「分割は自由」と即断するのは避けるべきです。当たらないと決めつけるより、当たり得るものとして条項を整えておく方が手戻りが少なくなります。

ジムの役務は、一つの契約の中に性質の違う部分が混ざります。トレーニングの指導、施設の利用、食事管理のアドバイス、機器による痩身などの施術、サプリメントなどの物販です。美容・痩身を目的とする施術を含むコースは、その部分が別の項目や特定継続的役務(エステ)に当たり得ます。その場合、解除時の上限の計算が別に定められるため(割賦販売法6条1項4号・6号)、トレーニングと施術を同じ分割に載せると、どこまで請求できるかが分かりにくくなります。分割の対象はトレーニングのコースに限り、施術や物販は別の契約・別の支払いにすると整理しやすくなります。

自社分割が割賦販売に当たるかの確認の順序

  1. 分割金を、ジム自身(または自社の決済アカウント)が毎月・数回に分けて受け取っていますか。

    はいこの先へ進みます。カード会社や信販会社が立て替えて一括で入金されるなら、自社分割ではなく後の節の整理になります。

    いいえ → 次へ

  2. 支払いは3回以上ですか。

    はい3回以上なら次へ。2回払いなら定義の外ですが、遅延損害金や解約精算は別の法律(消費者契約法など)で審査されます。

    いいえ → 次へ

  3. 最初の支払いから最後の支払いまでが2か月以上ですか。

    はい2か月以上なら次へ。全回が2か月に満たない設計なら定義の外ですが、期日の変更で崩れないようにします。

    いいえ → 次へ

  4. 会員は個人で、営業のためでなく契約していますか。

    はい営業のために又は営業として契約する場合は、この章の割賦販売の規定は適用されません(同法8条1号)。法人名義というだけで外れるのではなく、実態で見ます。

    いいえ → 次へ

  5. 役務は、指定役務(「技芸又は知識の教授」の包括的な項目を含む)に当たり得ますか。

    はい当たり得るなら、割賦販売として表示・書面・催告・上限の規定を前提に書類を整えます。

    いいえ → 次へ

最後まで「当たり得る」が残った設計は、割賦販売の規定を守る前提で書類を作るか、支払いの設計そのものを変えるか(2回払いまで、カード会社の分割に一本化、全額の前払い、など)を選びます。

自社分割にする場合の書面と条項:よくある失敗と直し方

自社分割が割賦販売に当たる場合、ジムには次の規定がかかります。いずれも条文の文言を契約書の条項と運用に落とし込めているかが、実務での分かれ目になります。

  • 取引条件の表示(同法3条1項):現金提供価格(契約と同時に全額を受け取る場合の価格)、割賦提供価格(分割で払う場合の価格)、支払の期間と回数、割賦販売の手数料の料率を、相手方に示します。広告で分割の条件を示す場合も、同様の事項を表示します(同条4項)。
  • 契約内容を明らかにする書面の交付(同法4条1項):割賦提供価格、賦払金(分割の各回の支払分)の額、支払の時期と方法、役務の提供時期、契約の解除に関する事項などを記載した書面を、契約後遅滞なく交付します。
  • 電子メールなどによる交付(同法4条の2):書面に代えるには、会員の承諾を得ることが条件で、承諾の方式は政令が定めています。承諾は、契約書を送る前の申込みの段階で取る運用にします。
  • 解除・一括請求の前の書面催告(同法5条):20日以上の相当な期間を定めて、支払を書面で催告し、その期間内に支払われなければ、解除や支払時期の来ていない分の請求ができます。これに反する特約は無効です。
  • 解除されたときの請求の上限(同法6条1項)と、支払が遅れたときの上限(同条2項):違約金を定めていても、上限を超える請求はできません。

実務で多い誤りは、この五つのうち、条項に落ちているのが「毎月いくら払う」だけで、残りが抜けていることです。次に、よく見られる書き方と、直し方を並べます。

書き方の例(一般的な例) 自社分割の条項:よく見られる書き方と整えた書き方

期限の利益の喪失

よくある書き方
会員が分割金の支払を1回でも遅らせたときは、当然に期限の利益を失い、残額を直ちに支払うものとします。
整えた書き方
会員が分割金の支払を遅らせたときは、当店は、20日以上の相当な期間を定めて書面で催告し、その期間内に支払がないときに限り、契約を解除し、または支払時期の到来していない分割金の全額を請求することができます。

理由期限の利益とは、期日まで支払を待ってもらえる債務者の利益のことです(民法136条1項は債務者のための期限と推定します)。割賦販売に当たる場合、書面による20日以上の催告を経ない解除や一括請求は5条1項に反し、反する特約は同条2項により無効です。

催告の方法

よくある書き方
催告は、登録されたメールアドレス・LINEに送信した時点で到達したものとみなします。
整えた書き方
解除と一括請求の前の催告は書面で行います。そのため、入会申込書に住所の記入欄を設け、住所の変更は書面または会員ページから届け出る旨を定めます。期日の来た分の督促や予約の停止は、メール・LINEでも行えます。

理由5条1項は「書面で催告」と定めており、メールやLINEが書面に当たるとする根拠は条文から確認できません。書面にするのは解除と一括請求の場面だけにします。

遅延損害金

よくある書き方
支払が遅れたときは、年14.6パーセントの遅延損害金を支払います。
整えた書き方
支払が遅れたときは、遅れた額に対し、遅れた日の翌日から支払の日まで、法定利率による遅延損害金を支払います。

理由年14.6パーセントは、消費者契約全般の上限(消費者契約法9条1項2号)です。割賦販売に当たる場合、6条2項により請求できるのは残額に法定利率による遅延損害金を加えた額までです。法定利率は年3パーセントから始まり3年ごとに見直されるため(民法404条2項・3項)、数字を固定せず「法定利率」と書きます。

退会時の精算

よくある書き方
分割払いを選んだ場合でも、退会時には、提供済みの回数分の料金と、残りの料金の20パーセントの解約手数料を差し引き、不足があれば直ちに支払います。
整えた書き方
分割払いの会員が契約を解除したときの請求額は、提供済みの役務の対価に、割賦提供価格と現金提供価格との差額を加えた額(および法定利率による遅延損害金)までとし、解約手数料は上乗せしません。

理由割賦販売の契約が役務の提供開始後に解除された場合の上限は、6条1項5号が、提供された役務の対価に相当する額に、割賦提供価格と現金提供価格との差額を加えた額と定めています。解約による損害を上乗せする枠(同項6号ロ)は、特定継続的役務に当たる場合に限られます。

上限の計算は、数字を入れて見ると分かりやすくなります。次の設定で、会員が途中で契約を解除した場合の上限を計算します。コース期間は6か月、現金提供価格は30万円、割賦提供価格は31万2,000円(毎月5万2,000円の6回払い)で、3か月目の末に解除し、3回分(15万6,000円)が支払済みとします。提供済みの役務の対価は、契約書で「現金提供価格を6で割った額に提供済みの月数を掛ける」と定めていたとします(この算定の定め方は契約書で決めておく事項です)。

解除時の請求の上限の計算例(設計例)
項目金額考え方
提供された役務の対価15万円30万円÷6か月×3か月。契約書の定めによる。
割賦提供価格と現金提供価格の差額1万2,000円31万2,000円−30万円。6条1項5号は差額を加える。
請求できる上限(遅延損害金を除く)16万2,000円15万円+1万2,000円。
既に支払われた額15万6,000円5万2,000円×3回。
追加で請求できる上限6,000円16万2,000円−15万6,000円。

数字は仮のもので、実際の請求額は契約書の定めと事情で変わります。

遅延損害金の違いは、5万2,000円が30日遅れた場合で、年14.6パーセントなら約624円、法定利率を年3パーセントとすると約128円です(元本×率×30÷365)。額の差より、割賦販売に当たるのに年14.6パーセントと書いていることが問題になります。

条文例

分割払いに関する特約(割賦販売に当たる場合の組み立て例)

1お客様が、料金を分割して支払うことを選択し、当店がこれを承諾した場合、お支払いの回数、各回の額、お支払いの期日及び方法は、契約書の別表に記載のとおりとします。別表には、現金提供価格、割賦提供価格、手数料の料率を記載します。

2当店は、お客様が分割金のお支払いを遅らせ、20日以上の相当な期間を定めた書面による催告を受けてもなおお支払いがない場合に限り、契約を解除し、または支払時期の到来していない分割金の全額を請求することができます。催告は、お客様が申込書に記載した住所に宛てて行います。

3お客様が分割金のお支払いを遅らせたときは、遅れた額に対し、遅れた日の翌日からお支払いの日まで、法定利率による遅延損害金をお支払いいただきます。

4お客様が契約を解除されたときは、当店は、提供済みのサービスの対価に、現金提供価格と割賦提供価格との差額を加えた額から、既にお支払いいただいた額を差し引いた残額をご請求します。既にお支払いいただいた額が上記の額を上回るときは、その差額をお返しします。当店は、この場合に、解約手数料を請求しません。

解約時の精算の項は、特定継続的役務に当たる痩身施術を含めないコースを前提にした書き方です。

カード分割と提携ローンでは、ジムの側に何が残るのでしょうか

カード会社の分割払い・リボ払いは、カード会社がジムに一括で代金を支払い、会員がカード会社に分割で返す形です(包括信用購入あっせん。同法2条3項)。ジムが分割金の回収や催告をする必要はなく、表示・書面の規定も基本的にはカード会社の側にかかります。契約書や規約に書くのは、分割はカード会社との契約であること、回数や手数料はカード会社の定めによること、ジムは一括で受領することです。

ただし、そこで終わらせて「分割に関する一切について当店は責任を負いません」と書くのは行き過ぎです。会員は、役務の提供を受けられない、契約の内容と違うなど、ジムに対して生じている事由を、カード会社からの支払の請求に対しても主張できることがあります(抗弁の接続。同法30条の4第1項)。これに反する特約で会員に不利なものは無効です(同条2項。一定の金額に満たない支払総額には適用がありません。同条4項)。契約書には「会員がカード会社に申し出たときは、当店は事実関係の確認に協力します」と書いておく方が、実際の問合せにも対応しやすくなります。

提携ローンは、会員が信販会社と立替払いの契約を結ぶ形で、個別信用購入あっせん(同法2条4項)に当たるものが多いと考えられます。カード会社の分割と違い、ジムも「個別信用購入あっせん関係役務提供事業者」として、役目を負います。具体的には、会員に対して、現金提供価格、支払総額、支払の期間と回数、手数料の料率などを示すこと(同法35条の3の2第1項)、広告で分割の条件を示すときに同様の事項を表示すること(同条2項)、契約を結んだ後に、役務の種類、支払総額、各回の支払分の額と時期、役務の提供時期、契約の解除に関する事項などを記載した書面を交付すること(35条の3の8)です。信販会社の調査には協力するよう努めるものとされています(35条の3の6)。

提携ローンでは、会員の申込みを信販会社が審査する点が、ジムの運用を左右します。信販会社は、契約の締結前に、会員の年収、預貯金、借入れの状況などを調べ、支払総額のうち1年間に支払う額が見込額を超えるときは、原則として契約を締結してはならないとされています(35条の3の3、35条の3の4)。体験当日にその場で入会を決めた会員の審査が通らないことは、普通に起こります。審査の前にトレーニングを始めてしまうと、契約が成立しなかったときに提供済みの分の回収先がなくなります。審査の結果を待って効力が生じる形にするか、審査前に提供する範囲を決めておくのが契約書の役目です(体験・入会の契約書)。

条文例

提携ローンを利用する場合の特約(組み立て例)

1お客様が、当店と提携する信販会社の分割払いを利用する場合、お客様は、信販会社と別に契約を結ぶものとし、分割の回数、手数料、お支払いの時期は、その契約の定めによります。

2信販会社の審査の結果、お客様と信販会社との契約が成立しなかったときは、この契約は、はじめから効力を生じなかったものとします。この場合、当店は、お客様に対し、違約金その他の金銭を請求しません。お客様がお望みの場合は、一括払いその他の当店が定める方法でお支払いいただくことにより、あらためてご契約いただけます。

3信販会社の審査の結果が出る前は、当店は、トレーニングのご提供を開始しません。ただし、お客様の書面による申出があり、当店が承諾した場合は、内容を限った体験として、お支払いの方法を別に定めて提供します。

第3項は、審査の前の提供を原則として行わない形にした例です。審査前のお試しを認める場合は、その範囲と対価の取扱いを、別に決めておきます。

提携ローンで契約した会員に、店舗外での勧誘や電話での勧誘があった場合は、さらに規定が加わります。特定商取引法のクーリングオフが認められる取引類型(訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供など)では、会員は、書面で、信販会社との契約の申込みの撤回または解除ができ、信販会社の契約が撤回等されると、ジムとの契約も撤回または解除されたものとみなされます(割賦販売法35条の3の10第1項・5項)。会員が書面を発した時に効力が生じ、ジムは、損害賠償や違約金を請求できません(同条6項)。既に提供した役務の対価も請求できず(同条11項)、信販会社から受け取った金額は返還します(同条8項)。路上で呼び止めて店へ同行させた人との店内での契約も、訪問販売に当たる場合があります(特定商取引法2条1項2号)。勧誘時の説明は事実と異なると取消しの対象にもなり得るため(35条の3の13)、「月々の負担は変わらない」のように総額や手数料を伏せる言い方は避けます(効果表示と口コミ・SNS)。

会員はジムに対する事由を信販会社への支払にも主張でき(35条の3の19)、特約で不利にはできません。信販会社と結ぶ加盟店契約で、会員の解約時の返金や精算の手順を確認したうえで、規約に「返金は信販会社を通じて行う場合があります」と書きます。

閉店・移転・トレーナーの退職・退会のとき、分割の残りはどうなりますか

パーソナルジムでは、担当トレーナーの独立や退職、店舗の閉鎖で、会員がレッスンを受けられなくなることが珍しくありません。会員が一括で払っていれば、未提供分の返金や振替の問題になります(返金ルール)。分割払いの会員では、さらに、残りの分割金を払い続けるのかという問題が加わります。

  • 自社分割の場合:提供できなくなった役務に対応する分割金を、ジムが請求し続けることは、通常、できません。店の都合で提供できなくなったときは、会員は、民法の規定(542条)に基づき、催告なしに契約を解除できる場合があります。ジムは、解除の時点での精算(提供済みの役務の対価、既払い額)を行い、残りの分割金の請求を止め、決済の仕組みを止める手順を、前もって決めておきます。
  • カード分割の場合:会員がカード会社に対して、役務を受けられないことを理由に支払の停止を求めることがあり、カード会社からジムへ事実確認や返金の求めが来ることがあります(抗弁の接続)。閉店のお知らせの際に、カード分割の会員向けに、返金の方法(カード会社を通じた取消しが基本になること)を案内しておきます。

見落とされやすいのは、役務の提供期間より、支払いの期間の方が長い設計です。たとえば、3か月の通い放題を、36回の分割で払う設計では、役務が終わった後の2年以上、会員が支払いを続けることになります。この設計は、払い終える前に会員が退会を申し出たとき、残りの分割金を全額請求できるのかが争いになりやすく、自社分割であれば解除時の上限の規定にも触れ得ます。支払いは遅くとも役務が終わる時期までに終える設計が現実的です(キャンセル・休会・退会)。

ヒヤリングで確認すること:分割払いの書類を作る前に

分割払いの条項は、ジムがどの支払い方法を実際に用意しているか、決済の仕組みでお金が誰にいつ入るかが分からないと、書けません。次の問いは、書類作りの前に確かめる事項と理由です(利用規約全体の組み立ては利用規約の作り方、開業時の書類は開業準備と書類一式)。

ヒヤリングの問いと理由 分割払いの書類を作る前に

問いなぜ聞くか
  1. 会員が選べる支払い方法を、全て挙げてください(一括、回数券、月額、総額の分割、カード分割、提携ローン、後払いなど)。
    方法ごとに、当てはまる法律上の整理が違うため、一つの規約に混ぜないための出発点になります。
  2. 分割金は、毎月ジムの口座や決済アカウントに入りますか。それともカード会社・信販会社から一括で入りますか。
    自社分割か、カード分割か、提携ローンかを分ける決め手です。決済代行の画面で毎月課金する形は、見た目がカード払いでも、ジムが毎月受け取る形になり得ます。
  3. 総額が決まっているコースを毎月に分けていますか。期間の定めのない月額会費ですか。最低利用期間はありますか。
    総額分割か月額会費かで、割賦販売の定義への当てはまりが変わります。月額会費でも、最低利用期間の残額を請求する定めがあると総額分割に近づきます。
  4. 分割の回数と、最初と最後の支払日の間隔は、どれだけですか。コース期間との前後関係は。
    2か月以上・3回以上の判定に使います。役務の期間より支払いの期間の方が長くなっていないかも見ます。
  5. 一括で払う価格と、分割で払う総額は違いますか。カード払いと振込で価格は違いますか。
    現金提供価格と割賦提供価格、手数料の料率の表示に使います。どの価格を基準にするかは、書面に書く前に決めます。
  6. 契約はどこで結びますか(店舗、会員の自宅や勤務先、オンライン)。体験当日にその場で申込みを受けますか。路上や電話で店へ誘った会員はいますか。
    店舗外での勧誘や電話での勧誘があれば、提携ローンの撤回・取消しの規定が関わります。
  7. 提携する信販会社はありますか。加盟店契約で、会員の解約時の精算方法はどう決まっていますか。
    契約書に書く返金の手順を、実際の手順に合わせるためです。
  8. 分割金が遅れたとき、誰が、どの方法で、いつから督促していますか。会員の住所を取っていますか。
    書面催告の体制があるかの確認です。体制がなければ、3回以上の自社分割はやめる判断も選択肢になります。
  9. 閉店・移転・トレーナーの退職があったとき、分割の残っている会員をどうするか、決めていますか。
    提供できなくなったときの精算と決済停止の手順を、規約と運用で先に決めておくためです。

回答によっては、条項の工夫ではなく、支払い方法そのものを整理する(自社分割を2回払いまでにする、カード分割に一本化するなど)方が、現実的で安全です。

まとめ:分割払いで起きがちなこと

ここまでの内容を、実務で起きがちなこととして整理します。どれも、規約に「分割可」と一言あるだけの状態や、条文の貼り付けで済ませた状態から生じます。

よくあるご質問

月額会費で毎月カード決済しているジムも、割賦販売法の対象になりますか?

期間の定めがなく、毎月の利用の対価をその月に受け取る会員制は、総額を分割して受け取る形とは異なります。ただし、コース期間と総額が決まっていて毎月に分けている場合や、最低利用期間の残額を請求する定めがある場合は、総額分割に近づきます。契約書の組み立てと運用を見て個別に判断します。

3回払いを30日以内に払い終えれば、問題は避けられますか?

割賦販売の定義は2か月以上の期間にわたり3回以上に分けて受け取ることなので、全回が2か月に満たない設計はその定義の外に出ます。ただし、期日を後ろへずらすと崩れること、遅延損害金や解約精算が消費者契約法で別に審査されることは変わりません。

カード会社の分割なら、契約書に分割のことは何も書かなくてよいですか?

分割がカード会社との契約であること、手数料や回数はカード会社の定めによること、ジムは一括で受領することを書いておくと誤解を防げます。一方、役務を提供できないときにカード会社へ主張できる抗弁の接続は特約で排除できないため、ジムの責任を一切負わないとする書き方は避けます。

分割払いの会員が途中で退会したら、残りの分割金を全額請求できますか?

自社分割で割賦販売に当たる場合、解除後の請求は、提供済みの役務の対価に割賦提供価格と現金提供価格の差額を加えた額までで、解約手数料の上乗せはできません。当たらない場合も、解除に伴う違約金は平均的な損害を超える部分が無効になり得ます(消費者契約法9条1項1号)。

遅延損害金は年14.6パーセントと書いてよいですか?

年14.6パーセントは、消費者契約の遅延損害金の一般的な上限です(消費者契約法9条1項2号)。割賦販売に当たる自社分割では、請求できるのは法定利率による遅延損害金までなので、数字を固定せず「法定利率」と書きます。

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