このページの要点
- 保証は結果の達成を約束するものではなく、未達のときに代金を返す約束として書く。返金の対象と算式、期限を契約書に数字で書き、広告も同じ言い方にする。
- 成果の指標は測定できる数値にし、測定は店の同一の機器、お客様の立会い、記録の写しの交付で行う。判定を店の判断だけにせず、再測定の手続を置く。
- 来店回数などの条件は数値で書き、店の休業・予約枠の不足は条件を満たしたものとして扱う(民法130条1項の考え方)。申請の期限は、終了時に店から案内する。
- 「全額」の範囲と条件は、広告の強調表示の近くに示す。誤認させる表示は、景品表示法5条2号、勧誘の場面では消費者契約法4条1項1号の問題になる。
結論:返金保証は「結果を約束する」ものではなく「結果が出なかったときに代金を返す約束」として設計する
「目標に届かなければ全額返金」とうたうパーソナルジムは珍しくありません。この保証は集客の力が強い反面、書き方を誤ると、広告では「全額」と見せながら実際にはほとんど返金されない制度になり、景品表示法と消費者契約法の両方から問題にされます。逆に、条件を甘く書けば、ほとんどの会員が対象になって店が持ちこたえられません。そこで最初に決めておくことは三つです。何をもって「結果が出なかった」と判定するか(条件)、それを誰がどう証明するか(証拠)、いくらをいつまでに返すか(返金額と時期)。この三つが契約書と広告で同じ内容になっていれば、保証は集客の道具として機能します。
もう一つ、最初に整理しておきたいのは言葉の使い方です。「成果保証」は結果の達成そのものを約束する言い方に読めます。トレーニングの指導は、通常は結果の完成を約束する請負ではなく、事務の遂行を引き受ける準委任に近い契約です(民法656条)。そこに「痩せることを保証します」と書けば、未達そのものが債務の不履行だと主張される足場になり、返金だけでなく損害賠償まで争われかねません(民法415条)。店が実際に約束するのは「達成」ではなく「未達だった場合の代金の返還」です。契約書には、そう書き分けます。
この記事では、型の選び方、条件、証拠、返金額、広告での見せ方、条項の直し方、事前の確認事項を順に整理します。通常の返金ルール(回数券・月謝・中途解約)はジムの利用規約の返金ルールで、ビフォーアフターなどの効果表示そのものは効果表示・口コミ・SNSで扱っているため、ここでは「保証制度」に固有の部分に絞ります。
返金保証にはどんな型があるか:全額返金だけが選択肢ではない
結論から言うと、「保証」といっても店が負うリスクの大きさは型によってまったく違います。広告で目立つのは全額返金型ですが、実務では、未達の程度に応じて返す比例型や、返金ではなく指導期間を延ばす無料延長型を選ぶ店も多く見られます。
| 型 | 内容 | 店の側の注意 | 消費者法上の見え方 |
|---|---|---|---|
| 全額返金型 | 所定の目標に届かなければ、対象とした料金の全額を返す | 対象とする料金の範囲(入会金・物販・事務手数料を含めるか)を先に決める。「全額」と書くなら、その範囲を表示する | 「全額」と見せて除外が多いと、取引条件の有利誤認や不実告知が問題になる |
| 比例返金型 | 達成率に応じて、未達の割合分を返す | 達成率の計算式と端数処理を書く。基準日と測定方法が争点になりやすい | 算式が明確なら説明しやすい。広告では「最大全額」のように上限を誤解させない書き方にする |
| 無料延長型 | 目標に届かなければ、追加料金なしで一定の回数・期間まで指導を続ける | 延長の上限、延長後も未達のときの扱い、延長を使わず返金を選べるかを決める | 返金ではないため、「返金保証」とは表示しない。条件の表示は同じく必要 |
| 満足保証型 | 「満足できなければ返金」のように、本人の主観を基準にする | 申請期間、回数、理由の記載、対象範囲を限らないと、運用が青天井になる | 判定者が本人なので、範囲の限定が広告に表示されているかが問題になる |
| 割引・特典型 | 未達の場合に次回の割引やポイントを付ける | 返金ではないので、「返金保証」「保証」の語を使わない | 返金と誤認させる表示は避ける |
型を混ぜる場合(例:一定の数値に届かなければ延長、延長後も届かなければ指導料の一部を返金)は、段階ごとに条件を書き、広告にも段階を示します。
返金保証の法的な組み立て:返金約束型か、解除権型か
法的な組み立ては大きく二つあります。一つは、「期間終了時に目標に届いていないことを条件として、店が代金の一定額を返す」という返金約束型です。条件が成就したときに効力が生ずる停止条件付きの合意と考えられます(民法127条1項)。もう一つは、保証期間の終了時に、お客様に契約を解除する権利を与える解除権型です。契約で解除権を定めたときは、相手方への意思表示で解除し(民法540条1項)、解除すると当事者は相手方を原状に復させる義務を負います(同法545条1項)。
設計上は、返金約束型の方が書きやすいと考えられます。解除権型では、返金額が原状回復の考え方に引きずられ、提供済みの指導の価値をどう扱うかが争点になりやすいからです。返金約束型なら、返金額を契約で直接決められます。
保証の条件をどう書くか:成果の指標、測定、通う義務
条件の書き方でいちばん大切なのは、判定を店の「判断」に委ねないことです。結論として、成果の指標は測定できる数値にし、測定の方法・時期・機器を決め、お客様側に求める行動(通う回数、記録の提出)も数値で書きます。そうしておけば、保証を適用するかどうかが人によってぶれず、店にとっても「ここまで通った人は対象」という線が引けます。
成果の指標:体重だけでよいか
指標としてよく使われるのは、体重、体脂肪率、ウエストなどの周径です。体重だけを基準にすると、筋肉量が増えて体の見た目は変わっているのに体重が動かない、あるいは前日の食事や水分で数値が上下する、といった場面で争いになります。体脂肪率は体組成計の機種や測定条件で値が変わります。指標を複数認めるなら、いずれか一つに届けば足りるのか、すべてに届かなければ未達なのかを書いておきます。
測定については、少なくとも次の点を決めておくと争いが減ります。
- 測定する機器:店に備える同一の機器を使う(お客様の自宅の体重計の値は基準にしない)。
- 測定の条件:来店時か起床後か、食事や運動からの経過時間、衣服の扱い。
- 測定の日:開始日と終了日の予定を契約時に示し、終了前に店が測定日を案内する。
お客様に求める行動:数値で、かつ店都合を除く
保証の対象になるための条件として、「所定の回数を受講する」「食事の記録を提出する」「キャンセルは前日までに連絡する」といった行動が置かれることが多くあります。実務で見られる契約書では、各施術の間隔を「1週間以上3週間未満」と数値で定め、正当な理由のない無断キャンセルや3週間以上の連続した来院の途絶があれば、保証の制度の適用を拒否できる、と書くものがあります。数値で書く方向は適切ですが、次の三点が抜けると、条件が実質的な拒否の道具になります。
- 店の都合(休業、担当者の不在、予約枠が取れないこと)で足りなくなった回数は、条件を満たしたものとして扱う。
- 体調不良、感染症、家族の事情など、お客様側にやむを得ない事情があったときの扱い(保証期間を延ばすのか、条件を免除するのか)を決める。
- 「適用を拒否する」場合は、満たされなかった条件と回数を書面で示す。
民法には、条件が成就することで不利益を受ける当事者が故意にその成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができる、という規定があります(民法130条1項)。たとえば、最終の測定の予約を店が埋め続けて測定させなかった場合は、この規定の考え方で争われます。「店が妨げたときは条件を満たしたものとして扱う」と契約書に書いておく意味はここにあります。
休会・キャンセル・中途解約との関係
保証期間中に休会したときや、予約をキャンセルしたとき、途中で解約したときの扱いは、先に決めておく必要があります。考え方の例として、次のように整理できます。保証を受けられるのは、期間の最後まで契約を続けた人であり、途中で解約した人は通常の中途解約の精算(予約キャンセルの「1回消化」と休会・退会、返金ルール)に従います。休会する場合は、保証期間も休会した期間の分だけ後ろにずらします。これを書かないと、「休んでいた期間も保証期間に含まれるのか」という争いが起こります。
体調・安全上の中断は、保証の外ではなく期間の延長で扱う
トレーナーが当日の体調から安全上の懸念があると判断して指導を中止した場合に、1回分を消化扱いにしない定めを置く契約書があります。保証でも同じ発想が使えます。安全のための中断を条件未達の理由にすると、お客様は無理をしてでも通うことになります。医師から運動を控えるよう言われた期間は保証期間を中断し、その分だけ延ばす、と書くのが穏当です。目標を達成させるために極端な食事制限を勧めるような運用は、健康被害が出れば債務不履行や不法行為の責任の問題になり得ます(民法415条・709条)。同意書や免責の書き方は整体・ジムの同意書と免責条項で扱っています。
証拠をどう残すか:測定記録、食事記録、写真、そして個人情報
保証制度で最後に争いになるのは、ほとんどの場合「数字」です。結論として、判定の基礎になる記録は、店が自ら保管し、お客様にも写しを渡します。お客様に提出を求める書類を増やすほど、書類不足を理由にした返金拒否の制度に見えてしまうからです。
実務で見られる売上保証型の契約書には、返金の請求にあたって、事業者が指定する記録や活動の履歴を、利用者が提出しなければならないと定めるものがあります。ジムに当てはめると、「食事記録アプリの画面を提出すること」「来店の記録を提出すること」といった書き方です。来店の記録は店が持っているので、お客様に提出させる意味がありません。お客様に求める書類は、お客様しか持っていないもの(食事の記録など、保証の条件にしたもの)に限り、店が持っている記録は店が確認する、と分けて書きます。
測定記録と写真:個人情報としての扱い
体重、体脂肪率、周径、食事の内容、写真は、いずれも個人情報にあたります。保証の判定のために使うのであれば、取得の時点で、利用目的に「返金保証の判定」を含めておきます。個人情報を取り扱うときは、利用目的をできる限り特定する必要があり(個人情報保護法17条1項)、契約書などの書面に記載された個人情報を本人から直接取得するときは、あらかじめ利用目的を明示しなければなりません(同法21条2項)。目的の範囲を超えて使うには本人の同意が必要です(同法18条1項)。保証の判定で撮影した写真を、そのまま広告に載せることはできません。広告への掲載は、媒体・目的・期間・撤回の方法を特定した別の同意が必要です(効果表示・口コミ・SNS)。
誰が判定し、不服があればどうするか
実務で見られる条項に、「成果基準に到達したかどうかは事業者が合理的に判断する」「審査の結果は最終のものとし、利用者は異議を述べない」というものがあります。判定者を店だけにし、異議を封じる書き方は、保証の中身を店が自由に決められる制度に見えます。消費者契約では、消費者の権利を制限する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効となります(消費者契約法10条)。数値の指標を採用したうえで、記録に疑問があるときは再測定を求められる、と書く方が、店にとっても説明の手間が少なくなります。
返金額・時期・申請:計算例で確かめる
結論として、返金額は「何を対象に」「いくら」「いつまでに」を数字と算式で書きます。説明のための仮の数字で、次のようなコースを考えます。
- コース:3か月・12回のダイエットコース。総額330,000円(税込)。
- 内訳:入会金33,000円(税込)、指導料297,000円(税込)。
- 保証の内容:開始時の体重から5.0kg減らす目標。届かなければ、指導料を返す。入会金は対象外。
まず、「全額返金」と広告に書いたときの問題です。この例では、返金の対象は指導料の297,000円で、総額330,000円ではありません。入会金を対象外とするなら、広告には「指導料の全額」と書くか、入会金を含めて全額を対象にします。「全額」の近くに除外を示さないと、見落とされやすくなります(後述の打消し表示)。
| 測定結果(減少量) | 達成率 | 全額返金型 | 比例返金型 |
|---|---|---|---|
| 5.0kg以上 | 100%以上 | 返金なし | 返金なし |
| 2.0kg | 40% | 297,000円(全額) | 178,200円(297,000円×60%) |
| 0.5kg | 10% | 297,000円(全額) | 267,300円(297,000円×90%) |
| 0kg(増加を含む) | 0% | 297,000円(全額) | 297,000円(全額) |
全額返金型は、目標に1グラムでも届かなければ全額が戻る設計で、店のリスクが最も大きい型です。実際には、「目標の一定割合に届かなければ」のように下限を置く型も考えられますが、その場合は広告に下限を示します。
比例返金型の算式は、「指導料×(1−達成率)」とし、達成率は「減少量÷目標の減少量」、端数は切り捨てる、と書きます。端数の処理を書いていないと、1円単位の争いになります。
条文例
契約書 第◯条(結果保証制度による返金)
1当店は、お客様が本契約のコース(以下「本コース」といいます。体験、単発のご利用及び回数券は含みません。)を最後まで受講し、かつ、次項に定める条件を満たした場合において、終了日の測定の結果が別紙記載の目標(以下「目標」といいます。)に届かなかったときは、本コースの指導料(税込)の全額を返金します。入会金及び物品の代金は、返金の対象に含みません。
2お客様が満たす条件は、次のとおりとします。一 本コースの回数のうち◯回以上を受講していること。二 各回の間隔が◯日を超えていないこと。三 別紙記載の食事の記録を、◯日以上提出していること。
3次の事由により前項の条件を満たせなかったときは、当店は、条件を満たしたものとして扱います。一 当店の休業、担当者の不在その他当店の責めに帰すべき事由により、予約できなかったとき。二 当店が指定する終了日の測定の機会を設けなかったとき。
4お客様が医師から運動を控えるよう指示を受けた期間、又は当店が安全上の理由で指導を中止した期間は、本コースの保証期間に含めません。この場合、保証期間は当該期間の日数だけ延長します。
5測定は、当店に備え付けの機器を用い、別紙記載の条件で、お客様の立会いのもと行い、その結果を記録してお客様に写しを交付します。測定の結果に疑義があるときは、お客様は、写しの交付を受けた日から◯日以内に再測定を求めることができます。
6返金の申請は、終了日の測定の日から◯日以内に、当店所定の方法で行うものとします。当店は、申請の期限を、終了日の測定の際にお客様に書面又は電子メールで案内します。
7当店は、申請を受けた日から◯日以内に、前項の申請に対する返金の可否を通知し、返金を行う場合は、お客様の指定する口座に振り込みます。振込手数料は当店が負担します。返金しない場合は、満たされなかった条件を示します。
8本条の返金は、結果の達成を約束するものではありません。当店は、本条により返金した額を、同一の原因に基づくお客様の損害賠償請求額から控除します。
第3項と第4項で、店の都合と安全上の中断を条件の外に出し、第5項で測定に再測定の手続を付けています。第8項は、返金と損害賠償を二重に払うことにならないよう調整する考え方の例で、損害賠償の責任そのものを免除する書き方にはしていません。
申請の期限と手続:短くしすぎない、店から案内する
実務で見られる契約書には、返金の請求期限を契約期間の終了後30日以内とし、書面または事業者所定の電子手続で申請させ、審査にも30日を使うものがあります。期限そのものを置くのは一つの考え方ですが、お客様が期限の存在を知らないまま過ぎたときに、返金を断る根拠にしないよう、終了日の測定の場で書面または電子メールで案内するところまで書きます。期限の長さは、測定の結果を受け取ってから考える時間と、書類をそろえる時間を考えて決めます。3営業日のように極端に短い期限は、消費者の権利を制限する条項として、消費者契約法10条の審査で争われる可能性があります。
広告での見せ方:景品表示法と消費者契約法に挟まれる
結論から言うと、返金保証の表示は、価格や支払の条件と同じく「取引条件」の表示で、実際より有利だと誤認させる表示は、有利誤認表示として規制されます(景品表示法5条2号)。さらに、返金保証を打ち出すことで「結果が出る」という印象を強めているのであれば、効果の表示として優良誤認表示(同条1号)の問題も生じます。返金するのだから効果の根拠はいらない、とはなりません。
「全額返金保証」と大きく書けば、条件は小さく書いてよいか
よくない、というのが答えです。消費者庁は、強調表示(「全額返金保証」のような目立つ表示)に対する打消し表示(「条件があります」のような表示)について、2017年に実態調査報告書を公表し、留意点をまとめています。その要点は、打消し表示は強調表示に近い場所に、同じ程度に目立つ文字の大きさ、色で示すこと、スマートフォンでは画面をスクロールしても目に入る位置に置くこと、などです。保証の条件が多い店ほど、広告は「条件付き」であることを正面から示す方が、後の争いが少なくなります。
効果の表示の側では、消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたとき、提出されなければ優良誤認表示とみなされます(景品表示法7条2項)。提出期限は、資料の提出を求める文書の交付から原則15日とされており、期限後に新たな試験や調査を実施して間に合わせることは、期限の延長の理由として認められないとされています。体験談は、統計的に客観性が確保されていなければ、根拠として認められにくいとされています。「このジムの会員の◯割が目標に達した」という実績を広告に使うなら、母数、対象期間、達成の定義、測定の方法を示した資料を、あらかじめ整えておく必要があります。課徴金納付命令の場面では、資料が提出されなければ優良誤認と推定されます(同法8条3項)。
事業者には、表示の管理体制を整える義務もあります(景品表示法22条1項)。国の指針は、表示に関する情報の確認、担当者の指定、根拠情報の事後的な確認などを措置として示しています。返金保証なら、広告の担当者が保証の条件を確認し、条件を変更したときは広告も同時に直す手順が、これに当たります。
勧誘の場面:保証を口頭で説明するとき
消費者契約法は、契約の勧誘にあたって、重要事項について事実と異なることを告げ、それによって誤認した消費者に、契約の申込みの意思表示の取消しを認めています(同法4条1項1号)。重要事項には、役務の質・内容のほか、対価その他の取引条件も含まれます(同条5項)。たとえば、カウンセリングの場で「どんな理由でも目標に届かなければ全額戻ります」と説明しながら、契約書の条件では来店要件で多くの人が対象外になる場合は、取引条件について事実と異なる説明にあたるおそれがあります。また、保証があることを告げながら、対象外になりやすい不利益な事実を故意または重大な過失により告げなかったときも、取消しの対象になり得ます(同条2項)。取消権は、追認できるときから1年(契約から5年)を過ぎると消滅します(同法7条1項)。トレーナー個人が口頭で保証の範囲を広げて説明しないよう、定型の説明文を置きます。
契約書の「保証しない」と、広告の「保証」がぶつかる
利用規約に「成果を保証するものではない」とあるのに、広告では返金保証を前面に出している、という食い違いが見られます。契約書に否定の文言があっても、広告や説明が「期待を誘導した」とされれば、表示と契約の全体として誤認させたかどうかが問われます。契約書では、「結果の達成は約束しない。ただし、本条の条件を満たして目標に届かなかったときは、本条のとおり返金する」と一つの条にまとめ、広告もその言い方に合わせます。
損害賠償の上限や免責との関係
損害賠償の上限を置くときは、返金と上限額が二重にならないよう整合させます。損害賠償責任の全部を免除する条項は無効で(消費者契約法8条1項1号)、軽過失の責任の一部を免除するなら、事業者、その代表者またはその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除くことを、その条項自体に明らかにしておく必要があります(同条3項)。返金は損害賠償と別の約束とし、同一の原因による賠償額から控除する形が考えられます(前掲の条文例の第8項)。
なお、痩身のための機器や手技などの施術をコースに含める場合は、その部分は別の規律(特定継続的役務提供)を検討する必要があります。トレーニングの指導だけなら指定外ですが、施術を併せて売る場合に、保証の返金額が法定の中途解約の精算の規律と食い違わないようにするには、契約の単位を分けるのが基本です(パーソナルジムにクーリングオフはある?)。
返金保証の申請を受けたときの確認の流れ(運用の例)
保証の対象外のコース(体験、単発、回数券)の申込みですか。
はい契約時に特定した対象外のコースであることを、申込書の記載で確認して伝える。
いいえ → 次へ
申請が期限を過ぎていませんか。
はい終了日の測定の場で期限を案内した記録があるか確認する。案内していなかったときは、期限を理由に断らない。
いいえ → 次へ
来店の回数や間隔、記録の提出に足りない点がありますか。
はい足りない条件と回数を書面で示す。足りない原因が店の休業・担当者の不在・予約枠にあるときは、条件を満たしたものとして扱う。
いいえ → 次へ
医師の指示や安全上の中止による中断の期間がありましたか。
はい中断した日数だけ保証期間を延ばし、延長後の終了日で判定をやり直す。
いいえ → 次へ
以上に当たらなければ、開始日と終了日の測定記録を比べる。目標に届いていなければ、契約で定めた額を、定めた期限までに返金する。届いていれば、その記録の写しを添えて、返金の対象にならない旨を通知する。
よくある失敗と直し方:誤った条項を、そのまま使える形に
実務で見られる誤りは、保証をうたう条項そのものより、周辺の条項との組合せで起きます。次に、よく見られる書き方と、整えた書き方を対にして示します。
書き方の例(一般的な例) 返金保証まわりの条項の直し方(一般的な例)
判定の主体
理由判定を店の裁量に委ねると、保証が実質的に店の判断で適用されなくなり、広告との差が大きくなる。
適用の拒否
理由拒否の事由が抽象的だと、未達のときにだけ使われる条項になる。
審査結果の効力
理由消費者の権利を制限する条項として、消費者契約法10条の審査を受ける。
「全額」の範囲
理由「全額」と見せて除外が多いと、取引条件の有利誤認や不実告知の問題になる。
「保証しない」との併存
理由契約と広告が食い違うと、表示と契約の全体として誤認させたかが問われる。
ヒヤリングで確認すること:保証を設計する前に聞く
契約書を書く前に、次の点を確認します。回答によって、型も、条件も、返金額の算式も変わります。
ヒヤリングの問いと理由 返金保証の設計に入る前の確認
- 保証をつける目的は何ですか(体験の成約率、高額コースの購入のためらいの解消、紹介の増加など)。目的によって型が変わる。購入のためらいの解消が目的なら、条件を緩くしないと意味がなく、返金のリスクを料金に織り込む必要がある。
- 保証の対象にするコースは、どれですか。体験、単発、回数券、月額の会員は対象に入りますか。対象外の契約を最初に特定しないと、後で全員が対象だったと言われる。
- 「結果が出た」とする指標は何ですか。体重、体脂肪率、周径、見た目のどれですか。指標によって測定の機器と条件が変わる。複数の指標を認めるなら、満たす基準を決める。
- 返金の対象にする料金に、入会金、物販、事務手数料、分割払いの手数料は含みますか。「全額」の範囲を広告に書けるかを決める。分割払いの場合は、返金が決済会社の手続を通ることがある。
- お客様に求める条件(来店回数、間隔、記録の提出)は、現在の運営で、実際に守れる水準ですか。店の予約枠が足りず守れない条件は、店都合で足りなくなる。予約の取りやすさも確認する。
- 広告やカウンセリングで、保証をどう説明していますか。トレーナー全員が同じ説明をしていますか。口頭の説明が契約書の条件とずれていると、重要事項について事実と異なる説明になり得る。定型の説明文を作る。
回答は、契約書の別紙(目標・測定条件・食事記録の様式)と、広告の表示文にそのまま転用できる形で整理しておきます。
返金保証は、条件・証拠・返金額の三つを、数字と算式で書き、広告にも同じ言い方で表示することで、集客の道具として機能します。通常の返金ルールはジムの利用規約の返金ルール、入会前の体験から入会までの書面は体験・入会の契約書、規約全体の作り方は利用規約の作り方で扱っています。
よくあるご質問
「結果に責任を持つ」「成果を保証する」と書くと、何が問題になりますか。
結果の達成そのものを約束する言い方に読めると、未達が債務の不履行だと主張される足場になり、返金に加えて損害賠償まで争われるおそれがあります。店が約束するのは達成ではなく、条件を満たして目標に届かなかったときの代金の返還だと、契約書で書き分けます。
「全額返金保証」と広告に書いて、入会金を返金の対象から外してよいですか。
対象から外すこと自体はできますが、広告の「全額」の近くに、同じ程度に目立つ形で除外を示す必要があります。示さないと、取引条件が実際より有利だと誤認させる表示(景品表示法5条2号)や、契約の勧誘での事実と異なる説明(消費者契約法4条1項1号)の問題になり得ます。「指導料の全額」のように対象を特定する書き方が安全です。
保証の条件として、来店回数や食事の記録の提出を求めてよいですか。
求めることはできます。ただし、回数や間隔は数値で書き、店の休業・担当者の不在・予約枠の不足で足りなくなった分は条件を満たしたものとして扱うこと、条件を満たさないとして断るときは書面で理由を示すことを併せて定めます。店が持っている記録は、お客様に提出させず、店が確認します。
目標に届いたかどうかの判定は、店が行ってよいですか。
判定を店だけに委ね、異議も認めない書き方は、消費者契約法10条の審査を受けやすくなります。店に備え付けの同一の機器で、お客様の立会いのもと測定し、記録の写しを渡し、疑義があれば再測定を求められる、という手続を付けると、店にとっても説明がしやすくなります。
返金保証の広告で、会員の達成率などの実績を載せてもよいですか。
載せることはできますが、効果の表示として、合理的な根拠を示す資料が求められます(景品表示法7条2項)。母数、対象期間、達成の定義、測定の方法を示す資料を整えておき、体験談だけに頼らないようにします。資料の提出を求められた場合の期限は原則15日とされています。
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本ページは一般的な情報提供です。法令の解釈や行政の運用は、個別の事情や今後の改正・通知によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は、法令の原文と官公庁の公表資料で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 国民生活センター / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 個人情報保護委員会