パーソナルジム・整体院の開業準備と書類一式

開業前に決めるのは、法律の線、書類の役割、書類どうしの優先関係の三つです。免許・届出の要否から、物件と保険まで、順に確認します。

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このページの結論

開業前に決めるのは、法律の線、書類の役割、書類どうしの優先関係の三つです。

運動の指導そのものには、免許や施術所の届出の制度はありません。

あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復に当たる行為は免許が要り、施術所は開設後10日以内の届出が必要です。

あなたの売り方はどれ?

売り方
核になる書類
加わる書類・不要になり得る書類
都度払いのみ
利用規約、同意書、プライバシーポリシー
申込書は簡易でよい場合がある。回数券契約書は不要
月謝制(毎月の自動課金)
利用規約、入会申込書、同意書、プライバシーポリシー
ネット申込みなら特商法表記。回数券契約書は不要
回数券・プログラム型
利用規約、回数券契約書、同意書、プライバシーポリシー
有効期間と返金の算式を、回数券契約書に一本化する
業務委託のトレーナーが担当する
上の組合せ
トレーナーの業務委託契約書。会員向け書類と矛盾させない

よくある誤り

  • キャンセルの期限や有効期間の起算点が、書類ごとに違う。事項ごとに、どの書類が決めるかを割り振り、ほかの書類はそれを参照します。
  • 同意書にサインをもらったから責任はないと考え、規約にも強い免責を重ねる。免責の枠は規約の一か所に置き、同意書は申告とリスクの説明に絞ります。
  • ネットで回数券を売りながら、特商法表記の解約・返金が規約と違う。解約と返金の要点を、規約と回数券契約書に合わせて明記します。

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結論:開業前に決めるのは、法律の線、書類の役割、書類どうしの優先関係の三つ

パーソナルジム、ピラティススタジオ、整体院を開く前に、契約書類の話を始める順番は決まっています。第一に、自分がやろうとしているメニューが、免許や届出の線のどちら側にあるか。第二に、その売り方のために、どの書類が何の役割で必要になるか。第三に、書類が複数になったときに、どの書類がどの事項を決めるのか(食い違ったときの優先関係)。この三つを開業前に決めておくと、後の文面づくりが短時間で済みます。逆に、ひな形をいくつか集めて並べるだけだと、書類どうしの内容が食い違ったまま運用が始まります。

この順番の最初にある「法律の線」は、整体・ストレッチ・ピラティス・パーソナルトレーニングで大きく違います。運動の指導そのものには、あはき法や柔道整復師法のような免許と施術所の届出の制度はありません。他方で、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復に当たる行為を業とするには免許が要り、その施術所は開設後に届出が必要です。痩身の施術や機器を併売すれば、特定継続的役務提供(エステ)に当たる場面も出てきます。ネットで回数券や月謝を売るなら、通信販売の表示の義務がかかります。本ページは、この順に、開業前に確認しておきたいことを並べます。

業態ごとの免許・届出の線:どこから先に確認が必要になるか

業態・メニューごとの、免許・届出の確認
業態・メニュー免許・届出根拠書面で押さえること
運動の指導(パーソナルトレーニング、ピラティス、ヨガのレッスン)この種の指導について、あはき法や柔道整復師法のような免許と、施術所の開設届出の制度は設けられていない。—実際に行う指導の内容と、行わないこと(診断、治療、医療的な効果の約束)を書く。身体に触れて矯正する行為を加えるなら、次の行以降を確認する(整体と医業類似行為)。
整体・ストレッチ・リラクゼーション(免許が必要な手技を行わない範囲)あはき法の施術所の届出(9条の2)は、免許を受けた施術者の施術所に関する制度で、免許を要しない整体等に同じ届出が課されるわけではない。あはき法1条・9条の2・12条「あん摩・マッサージ・指圧」に当たる手技を免許なく業とすることはできない(同法1条)。同法12条は、1条に掲げるもの以外の医業類似行為を業とすることを禁じている。どの手技がどちらに当たるかの線引きを、メニューごとに確かめておく。
あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうの施術所免許(あはき法1条)。施術所は、開設後10日以内に、所在地の都道府県知事に届出(同法9条の2第1項)。変更も同様。休止・廃止は、その日から10日以内(同条2項)。あはき法1条・9条の2広告できる事項は、同法7条に限定されている。ウェブサイトや看板の文面を、開業前に点検する。
柔道整復の施術所柔道整復師の免許(柔道整復師法15条)。施術所は、開設後10日以内に、所在地の都道府県知事に届出(同法19条1項)。休止・廃止も10日以内(同条2項)。柔道整復師法15条・17条・19条脱臼・骨折の患部への施術は、応急手当を除き、医師の同意が必要(同法17条)。同意書や紹介の運用を書面に反映する。
痩身の施術・機器の併売指定された役務(エステティック)に当たる場合は、特定継続的役務提供の規律(概要書面、契約書面、クーリング・オフ、中途解約)がかかる。特定商取引法41条以下当てはめは、役務の内容、期間、金額で決まる(特定継続的役務提供への当てはめ)。機器の性能の表示は、広告の規律(効果表示・口コミ)で点検する。

免許の要否や、どの手技がどの区分に当たるかの個別の判断、施術所の届出の窓口は、行う内容と所在地の自治体によって変わります。自治体の条例・要綱や、建物の用途、消防などの別の手続も、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。表は、書面を作る前の確認の入口です。

この表で注意したいのは、届出の有無と、広告や契約書の書き方の問題が別だということです。免許や届出の制度がないメニューでも、「痛みが治る」「骨格が矯正される」のように、医療的な効果をうたえば、広告の規律(景品表示法、特定商取引法12条、あはき法7条など)や、免許の必要な行為との線引きが問題になります。診断や治療に踏み込む表現は、契約書面にも広告にも置かないのが基本です。

開業時にそろえる書類の地図:七つの書類と、それぞれの役割

開業時に問題になる書類は、七つに整理できます。ここでは、書類ごとの役割と、他の書類に任せるべき事項を示します。一つの書類に何でも書き込もうとすると、書類どうしで同じ事項が重複し、改訂したときに食い違いが生まれます。

開業時にそろえる書類と、それぞれの役割
書類役割書かない事項(他の書類に任せる)詳しい解説
利用規約会員全体に共通の条件。予約、料金の支払、休会・退会、禁止事項、免責の枠、規約の変更、合意管轄。個別のコース・金額(申込書)、健康状態の確認(同意書)、個人情報の取扱い(ポリシー)各条の解説は、キャンセル・休会、免責、返金のページ
入会申込書個別の契約内容の確定。コース、料金、期間、特典、支払方法、署名または送信の時点=契約の成立時点。全員共通の長い条文(利用規約)体験・入会・勧誘
健康状態の申告書兼同意書健康状態の申告、リスクの説明、運動への同意、緊急連絡先。未成年・産前産後の追加書類。責任をゼロにする効力は持たない。免責の枠は規約に一か所だけ置く。けが・同意書と免責
回数券契約書(回数券・プログラム型)回数券・プログラムの有効期間、中途解約と返金の算式、失効、譲渡。月謝制のみの店では不要になり得る。回数券・返金ルール
プライバシーポリシー取得する情報、利用目的、預け先、請求の窓口。申込書の同意欄は、ポリシーの利用目的と整合させる。プライバシーポリシー
特定商取引法に基づく表記ネットで申込みを受ける場合の、法定の表示事項。解約・返金の中身は規約と回数券契約書へリンクし、本文を書き写さない。本ページの「ネット販売の表記」
トレーナーとの業務委託契約書店とトレーナーの関係。業務の内容、報酬、顧客の引抜き、保険、終了。会員との契約の条件(規約・申込書)業務委託の設計・報酬

すべての書類が、どの店にも必要なわけではありません。売り方によって、必要な書類は変わります。次の表で、自店の売り方に合う組合せを確かめます。

売り方別:必要になる書類の組合せの目安
売り方核になる書類加わる書類・不要になり得る書類
都度払いのみ(回数券も月謝もない)利用規約、同意書、プライバシーポリシー申込書は簡易でよい場合がある。回数券契約書は不要。
月謝制(毎月の自動課金)利用規約、入会申込書、同意書、プライバシーポリシー継続的に契約する旨を、ネット申込みなら特商法表記で示す。回数券契約書は不要。
回数券・プログラム型利用規約、回数券契約書、同意書、プライバシーポリシー有効期間と返金の算式を、回数券契約書に一本化する。
ネットで申込み・決済を受ける上の組合せに特商法表記、申込みの最終確認画面決済サービスの規約の確認を契約書類の整備と同時に進める。
業務委託のトレーナーが担当する上の組合せに業務委託契約書顧客情報の取扱い、保険、引抜きの定めを、会員向け書類と矛盾させない。
出張(お客様の自宅・勤務先)で契約する上の組合せに、訪問販売の書面(法定の書面とクーリング・オフ)店舗用の申込書で済ませない(事故・保険・出張サービス)。

書類どうしの優先関係:食い違いが起きる場所と、整え方

書類が増えると、同じ事項が複数の書類に別々の文言で書かれ、食い違います。最初に決めておくのは、事項ごとに「どの書類が決めるか」です。個別の契約条件は申込書、全員に共通の条件は規約、健康状態の申告とリスクの説明は同意書、個人情報の取扱いはポリシー、と役割を割り振ります。そのうえで、規約に書類の適用関係の条を置いておくと、食い違いが見つかったときの読み方が決まります。

条文例

利用規約 第◯条(書類の適用関係)

1会員と当店との契約は、本規約、入会申込書、健康状態の申告書兼同意書、および当店が別に定める書面(以下「契約書面」といいます)によって構成します。

2本規約と入会申込書の記載が異なる場合は、入会申込書の個別の記載が優先します。ただし、入会申込書に記載のない事項は、本規約によります。

3健康状態の申告書兼同意書は、健康状態の申告、運動に伴うリスクの説明、およびそれへの同意に関する事項についてのみ定めるものとし、料金、期間、解約その他の契約条件を変更しません。

4個人情報の取扱いについては、プライバシーポリシーによります。

個別の記載を優先する形が分かりやすい一方で、会員に一方的に不利な条件を申込書の「特約」に紛れ込ませると、消費者契約法10条の審査(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)の対象になります。広告の表示と契約書面が異なる場合に、契約書面が優先すると書いても、広告の表示について生じる責任(特定商取引法12条、景品表示法)が消えるわけではありません。

書類間で食い違いが起きやすい事項と、整え方
事項食い違いの例整え方
キャンセルの期限規約は前日まで、回数券契約書は前々日まで、予約ページの案内は当日朝まで。期限と取扱いは一つの書類(規約)に書き、他の書類は参照する(キャンセル・休会)。
免責の範囲規約は全部免責、同意書は故意・重過失を除く、というように強さが違う。免責の枠は規約の一か所に置き、同意書は申告とリスクの説明に絞る(けが・同意書と免責)。
有効期間の起算点申込書は購入日、回数券契約書は初回の利用日から数える。起算点を一つに決め、回数券契約書に書く。申込書はそれを参照する。
料金の表示予約ページは税込、申込書は税別。お客様向けに価格を示すときは、消費税を含む総額を表示する(消費税法63条。免税事業者を除く)。税抜価格を併記する場合も総額が明瞭に分かるようにし、書類と画面を同じ表記でそろえる。
運営者の名前規約は屋号、特商法表記は法人名、ポリシーは別の表記。契約の当事者である運営者名(法人名、屋号の関係)を、すべての書類で同じにする。
個人情報の利用目的申込書の同意欄とポリシーの利用目的が違う。申込書の欄は、ポリシーの項を参照する形にする。

規約が定型約款(不特定多数を相手方とする画一的な取引で、契約の内容とすることを目的として準備された条項の総体)に当たる場合、規約を契約の内容にするには、会員が規約を契約の内容とする合意をしているか、運営者が規約を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していることが必要です(民法548条の2第1項)。入会申込書や申込みフォームに、「本規約に基づく契約です」と書き、規約を表示する場所(ウェブサイトの掲載ページ、店頭の備え付け)を示し、同意のチェックを記録する運用にします。会員から請求があったときは、規約の内容を示します(同法548条の3第1項)。規約全体の組み立て方は、別のガイドで扱います。

ネット販売の特商法表記:回数券・月謝を売るときの表示事項

店のウェブサイトやSNS、予約ページで回数券や月謝の申込みを受け付けるなら、特定商取引法の「通信販売」(販売業者または役務提供事業者が、郵便その他の主務省令で定める方法で契約の申込みを受けて行う役務の提供など。同法2条2項)の規律がかかります。役務の提供条件について広告をするときは、広告に、①役務の対価、②対価の支払の時期と方法、③役務の提供時期、④申込みの期間があればその内容、⑤申込みの撤回または解除に関する事項、⑥主務省令で定める事項を表示しなければなりません(同法11条)。⑥は、特定商取引法施行規則23条に定められています。

回数券・月謝で書く特商法表記の項目
項目回数券・月謝で書く内容根拠
役務の対価入会金、月会費、回数券の金額を、消費税を含む総額で書く(免税事業者を除く。税抜価格を併記する場合も総額が明瞭に分かるようにする)。追加で負担する金銭(事務手数料、決済手数料、振込手数料など)があれば、内容と額も書く。特商法11条1号、同法施行規則23条4号、消費税法63条(総額表示)
支払の時期と方法前払いか月払いか。支払方法(現金、カード、口座振替など)。特商法11条2号
役務の提供時期予約制の場合は、予約した日時。回数券の有効期間。期間または期限で示す。特商法11条3号、同法施行規則24条2号
申込みの期間期間限定のキャンペーンなど、申込みの期間を定めている場合にその内容。特商法11条4号
申込みの撤回・解除解約、中途解約、返金、休会の取扱いの要点を、見やすい箇所に明瞭に書く。特商法11条5号、同法施行規則24条3号
事業者の情報運営者の名称、住所、電話番号。法人でインターネットで広告する場合は、代表者または通信販売業務の責任者の氏名。同法施行規則23条1号・2号
継続して契約する必要があるとき月謝制の自動継続など、2回以上継続して契約する必要がある場合に、その旨と金額、契約期間その他の条件。同法施行規則23条7号
その他の特別な条件回数の制限、年齢の制限、利用できる時間帯など、特別な提供条件。同法施行規則23条8号

役務の契約には、商品の通信販売の場合のような、法律に定めのある申込みの撤回(特商法15条の3)の規定は及びません。そのため、解約や返金の定めを、自店のルールとして明瞭に書く必要が生じます。

申込みの最終画面にも、表示の義務があります。顧客が申込みの手続の画面で申込みをする場合、画面には、役務の分量(回数や期間)と、役務の対価、支払の時期と方法、役務の提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項(同法11条1号から5号まで)を表示しなければなりません(同法12条の6第1項)。また、「申込む」「購入する」などのボタンが申込みとなることについて、人を誤認させるような表示をしてはなりません(同条2項)。月謝制の自動継続を、最終画面では分かりにくくし、2回目以降の請求があとから分かるような作りは避けます。

書き方の例(一般的な例) 特商法表記の書き方

解約・返金の表記

よくある書き方
返品・キャンセルは、お客様都合の場合はお受けできません。
整えた書き方
解約と返金の取扱いを、規約と回数券契約書の条文の要点に合わせて書く。休会、中途解約の可否、返金の有無と算式、手続の方法を、見やすい箇所に明記する。

理由商品の返品のひな形をそのまま役務に流用すると、規約の中途解約の定めと食い違う。表示事項は、解除に関する事項そのものである(同法11条5号)。

運営者名

よくある書き方
運営責任者:○○(屋号のみ)
整えた書き方
法人なら法人名、代表者または責任者の氏名、住所、電話番号を書く。屋号は法人名との関係が分かるように併記する。

理由契約の当事者が誰かが読み取れないと、問合せや解約の窓口も分からなくなる(同法施行規則23条1号・2号)。

通信販売の規律の外にある場面にも気をつけます。電話で勧誘して申込みを受ける場合は電話勧誘販売(同法2条3項)、店舗外で契約を取る場合は訪問販売(同条1項)の規律が、それぞれ別にかかります。痩身の施術を組み込んで特定継続的役務提供に当たる場合は、概要書面と契約書面の交付が必要になります。また、法人が営業のために申し込む契約は、通信販売の規律の適用除外とされています(同法26条1項1号)が、個人向けと法人向けを同じ画面で受け付ける店は、個人向けに合わせた表示にしておくのが安全です。

物件と保険:用途、転貸、原状回復、補償範囲を契約の前に確かめる

店舗として使う物件を契約する前に、賃貸借契約書と、マンションの一室なら管理規約を読みます。契約書には、物件の使用目的(居住用、オフィス用、店舗用など)が書かれていて、その範囲を超えて使うと契約違反になり得ます。パーソナルジムやピラティススタジオは、来客の出入り、器具の落下音、音楽、人の動きによる振動を生むため、同じフロアや階下の入居者との関係で問題になりやすい業態です。使用目的、営業時間、看板の設置、来客の人数、器具の搬入について、貸主から書面で承諾を得ておきます。

もう一つ重要なのが転貸です。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借物を転貸できません(民法612条1項)。承諾なく第三者に使用または収益をさせると、賃貸人は契約を解除できます(同条2項)。業務委託のトレーナーに部屋を貸して、自分で会員を集めさせる、他の事業者に時間単位で場所を使わせる、といった運用は、転貸に当たる場合があるため、あらかじめ貸主の承諾を得るか、運用の形を変えます。会員と契約するのが店で、トレーナーは店の業務を行うために店の設備を使う形なら、転貸の問題は小さくなります。トレーナーが自分の名義で会員と契約し、場所の対価を店に支払う形は、場所を使わせる関係になり得ます。どちらの形かは、貸主に説明しておきます。

退去のときの原状回復は、賃借人が賃借物を受け取った後に生じた損傷について負いますが、通常の使用による損耗と経年変化は除かれます(同法621条)。パーソナルジムでは、鏡の取付け、床の補強、防音のための壁や床の工事、器具の固定など、賃貸借の通常の使用を超える造作を加えることが多く、これらは、退去時にどこまで撤去するか、費用を誰が負担するかを、工事の前に書面で決めておく必要があります。造作を次の入居者に譲る場合の取扱いは、貸主の承諾が前提です。

ヒヤリングの問いと理由 物件を契約する前の確認事項

問いなぜ聞くか
  1. 使用目的に、トレーニングやピラティスの指導、整体の施術が含まれていますか。
    居住用やオフィス用の契約のままでは、営業目的の利用が契約違反になり得る。
  2. 来客の人数、営業時間、看板の設置は、貸主の承諾を得ていますか。
    承諾を書面で残す。管理規約が別に定めている場合は、その内容も確認する。
  3. 器具の重量、落下音、音楽、振動への対応(防音マット、床の補強)は、どこまで認められますか。
    工事を伴う場合は、工事の範囲と費用の負担を、着工前に書面で決める。
  4. トレーナーが場所を使う運用は、転貸に当たりませんか。
    会員と契約するのが店で、トレーナーが店の業務のために設備を使う形なら整理しやすい。トレーナーの名義の契約で場所を使わせる形は、貸主の承諾を取る(民法612条)。
  5. 退去のときに、鏡や床、壁の造作は、どこまで撤去しますか。
    原状回復の範囲と費用の負担を書面にする(民法621条)。
  6. 契約期間、更新、中途解約の予告期間はどうなっていますか。
    開業後の売上が読めない時期に、長い予告期間や解約金が重くならないよう確かめる。

保険は、法律上の加入義務があるものではなく、任意の備えです。ただし、賃貸借契約や管理規約で、施設賠償責任保険の加入を求められることがあります。加入の前に押さえたいのは、補償の対象となる事故の範囲、被保険者に誰が含まれるか、補償限度額と自己負担額(免責金額)、補償の対象外となる事由です。業務委託のトレーナーの指導中の事故が補償の対象になるかは、保険証券の記載で確かめます(事故・保険・出張サービス)。

加入のときは、実際に行う業務の範囲を正確に伝えます。器具の種類、手技を伴う施術の有無、出張の有無、子どもや高齢者、妊娠中の方の受入れの有無を、申込みの際に正確に伝えていないと、事故の後に補償の対象外と言われかねません。お客様からの預り物(貴重品、着替え)の事故は、施設の賠償責任とは別の保険が必要なことがあります。保険は、免責条項を強く書くことの代わりにはなりませんが、免責条項が効かない場面に備える手段になります(免責の限界)。

予約・決済サービスを選ぶ前に:書類と運用を支える仕組みの確認

予約システム、決済サービス、会員管理アプリは、書類で決めたことを実際に動かす道具です。道具が書類に合わないと、書類が運用と食い違います。サービスを契約する前に、書類の整備と並べて、次の事項を確認します。

ヒヤリングの問いと理由 予約・決済サービスの契約前の確認

問いなぜ聞くか
  1. 規約への同意の記録は、日時と規約の版とともに残せますか。
    規約を契約の内容にする合意を、後から示せるようにする(民法548条の2)。
  2. 回数券、月謝の自動課金、前払いに対応していますか。キャンセルの期限は、規約どおりに設定できますか。
    画面の設定が規約と違えば、運用が規約を上書きしてしまう。
  3. 決済サービスの契約名義は、契約書類上の運営者と同じですか。業務委託や第三者名義での利用は認められていますか。
    特商法表記、規約、決済の名義がそろわないと、返金やチャージバックの責任の所在が曖昧になる。
  4. データの保管場所はどこの国ですか。退会後、いつ削除されますか。データを取り出せますか。
    ポリシーの外国にある第三者の記載と、保存期間に直結する(プライバシーポリシー)。
  5. サービスのプライバシーポリシーのテンプレートを、自店の名義で使えますか。
    主語や窓口を店に直せるかを確認する。システム会社の文面のまま掲げることはできない。
  6. 導入の対象に、トレーナー個人のアカウントや私物端末を含みますか。
    顧客情報を店のシステムの外に出さない運用にする(カルテ・健康情報)。

開業の直前に、書類を通しで読む点検を、一度は行います。各書類を頭から通して読み、料金、期間、キャンセルの期限、運営者の名前、個人情報の利用目的が一致しているか。広告や予約ページの表示が、契約書面と違っていないか。ひな形から引き継いだ、運用に合わない記載(紙の会員証を前提にした条文など)が残っていないか。開業の直前まで料金やコースが動いた店ほど、この点検の価値は大きくなります。

このページの要点(まとめ)

  • 運動の指導には免許・施術所の届出の制度はないが、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復に当たる行為は免許が要り、施術所は開設後10日以内に届出が必要になる。
  • 書類は七つに整理できる。利用規約、入会申込書、健康状態の申告書兼同意書、回数券契約書、プライバシーポリシー、特商法表記、トレーナーの業務委託契約書。売り方で必要な組合せが変わる。
  • 事項ごとに、どの書類が決めるかを割り振り、規約に書類の適用関係の条を置く。ネットで回数券や月謝を売るなら、通信販売の表示事項と申込み最終画面の表示を整える。
  • 物件は使用目的、転貸、原状回復を、契約の前に書面で確かめる。保険は、業務委託トレーナーの指導中の事故が補償の対象かを、保険証券で確認する。

よくあるご質問

整体院を開業するのに、届出は必要ですか?

免許が必要な手技(あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復)を行わない整体・ストレッチ・リラクゼーションには、あはき法9条の2や柔道整復師法19条のような施術所の開設届出の制度は、法律上は定められていません(自治体の条例・要綱などは、所管官庁の資料で確認が必要です)。免許が必要な手技を行う場合は、免許を受けたうえで、開設後10日以内に所在地の都道府県知事への届出が必要です。どの手技がどちらに当たるかは、メニューごとに確かめます。

開業時に、最低限どの書類をそろえればよいですか?

売り方によって変わります。月謝制なら、利用規約、入会申込書、健康状態の申告書兼同意書、プライバシーポリシー、回数券・プログラム型なら回数券契約書、ネット申込みなら特商法表記が基本です。業務委託のトレーナーを使うなら、業務委託契約書が加わります。書類ごとの役割と、書かない事項を決めてから文面を作ります。

ネットで回数券を売るときは、必ず特商法の表記が必要ですか?

ネットで申込みを受けて役務を提供する場合は、通信販売に当たり、広告に表示すべき事項が定められています(特定商取引法11条、同法施行規則23条)。個人を相手とする取引が対象で、法人が営業のために申し込む契約は適用除外とされています(同法26条1項1号)。解約・返金の取扱いも表示事項に含まれるので、規約の内容と食い違わせないようにします。

マンションの一室でジムを開く場合、何に気をつければよいですか?

賃貸借契約の使用目的と、管理規約に、営業目的の利用が認められているかを最初に確かめます。来客、騒音、振動の問題は、貸主と管理組合への事前の説明と、書面での承諾で備えます。他の事業者やトレーナーに場所を使わせる運用は、転貸にならないかを確認し、必要なら承諾を得ます(民法612条)。

施設賠償責任保険に入っていれば、同意書や免責条項は要りませんか?

要らなくなるわけではありません。保険は、事故のあとの損害を補う手段で、事前のリスクの説明や、申告された健康状態を前提にした運動の提供を代替するものではありません。保険の補償範囲に、業務委託トレーナーの指導中の事故が含まれるかを確かめたうえで、同意書、規約の免責、保険を組み合わせます。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。法令の解釈や行政の運用は、個別の事情や今後の改正・通知によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 国民生活センター / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 個人情報保護委員会

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